海部美知「ビッグデータ文明論」最終回 第三次産業革命は終わったのか?

メルマガ「現代新書カフェ」より
海部 美知 プロフィール

日本のグローバル化の「志」

 そこで一つ、気をつけてほしいことがあります。

 日本を代表する企業が次々と苦境に陥るなか、日本企業は「グローバル化」しなければいけないとのかけ声がどんどん盛んになっています。それ自体は結構なことなのですが、日本のメディアや企業がこれを語るときに、「だって日本はもう少子高齢化で見込みがないから、海外に売らなければ」という論調が多いのが、私は気になっています。そういう動機があるのは事実で仕方ないのですが、それだけでは、出てこられる先の国の人から見ると、「日本の高齢者を養うために海外市場から収奪する」というふうに聞こえ、「だから何? 私には関係ない。それなら自国の企業から買うよ」と反応したくなります。

 自社の技術や得意技をうまく活かして、日本以外のユーザーの問題にも取り組んだり 、幸せになってもらったりする。まだ見ぬ世界最先端の技術を求めるコミュニティに、無駄をいとわず投資したり貢献したりする。世界を良くするために自分も皆と一緒に頑張る。そのためには、給料の高い賢い人を集めて存分に働いてもらう必要もありますし、先行投資のための余力も必要ですから、きちんと対価も払っていただく必要があります。しかし、根底に多くの人が共感するような志をもっていなければ、各国のユーザーや業界コミュニティに賛同してもらえません。

 特に、製品が饒舌に語ってくれる製造業でなく、これからの先進国を担うべき「サービス業」では、日本企業でこれまでグローバル化の大きな成功例がありません。「勝ちパターン」がないなかで、お客様を開拓していくには、志だけでもダメですが、志がなければ何もはじまりません。

 これはビッグデータだけの話ではありません。これから世界で頑張ろうという日本の企業や開発者やアントレプレナー(起業家)は、ぜひ、こうした「志」をもって頑張っていただきたい、日本の力をもって世界を良くしてほしい、と切に願っています。

(おわり)

 
『ビッグデータの覇者たち』の刊行を記念しまして、著者の海部さんと、慶應字塾大学教授の國領さんによる対談をおこないます。情報(データ)の本質に精通するお二人が、欧米の最新事例を紹介するとともに、ビジネスや公共政策において、データを活用することの意義やそれによって起きる変化について、大いに語り合います。
 
 
海部美知(かいふ・みち)
1960年、神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学MBA取得。
本田技研工業、NTTアメリカなどを経て、現在、コンサルティング会社ENOTECH Consulting代表を務める。著書に、『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)、ブログに「Tech Mom from Silicon Valley」がある。シリコンバレー在住。