2013.05.03
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大研究 病院で殺されないために知っておくべきこと「検査」のウソ——病人はこうして作られる 第1部 これでは病人が増えるだけなぜ「基準値」はこんなにいい加減なのか

週刊現代 プロフィール

 このようなシステムをつくりだしてメリットがあるのは誰なのか。

「罪深いことですが、医療も"産業"です。今は人口は減っているが、医者の数は年々増えています。この状況で儲けるには、全体のパイを増やす必要がある。そのために健診と人間ドックがあるのです。その際、普通にやっていても患者は増えないので、基準値を下げて患者を増やす。顕著なのが血圧やコレステロールでした。

 アメリカやフィンランドなどでは、健康診断は意味がない、寿命が延びないというしっかりしたデータがすでに出ており、日本の医師たちも知っています。知っていて知らないふりをしている。医師たちが学問の道を踏み外して"商売"に励み、患者がその被害者になっているのです」(前出・近藤医師)

 日本の基準値のおかしさは、男女の性差を無視している点にも表れている。

 たとえば、女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールを下げる作用があるため、女性は閉経して女性ホルモンが減少すると、当然コレステロール値は上がる。そのため、現行の基準値220を閉経後の女性に当てはめると、50歳過ぎの女性の55%が「異常」に分類されてしまう。そこでアメリカでは、該当年齢の女性の基準値は265未満となっているのだが(この基準だと異常は5%)、日本はこの性差を無視してしまっているのだ。

 清風荘病院特別顧問の天野恵子医師が憤る。

「昨年、日本でもガイドラインが改定されて、診断上の性差の問題は解消されましたが、実際はまだほとんど浸透していません。本来、日本動脈硬化学会の医師たちがこのことを声を大にして言ってくれないとだめなんです。講演会などがあっても彼らは言わない。製薬会社がスポンサーだからでしょう。これが一番の問題だと私は思っています」

 すべての医師が、カネ儲け主義であるわけでは決してない。現場の医師たちは、そこまで考えて行動する暇がないというのが現状だろう。だが、病気を予防したい、早期発見をして治してあげたいと、患者に向き合う医師がいる一方で、医療政策や製薬会社も含めた大きな規模での動きが、病人を増やしてしまっていることは否めない。

 前出の松本医師は、ちょっとした異常であたかも「病気」のように名前をつけて扱うことに問題があると指摘する。

「高血圧も高脂血症も高尿酸血症もそうですが、これらは高血圧状態、高脂血状態、高尿酸血状態と言うべきであって、『症』ではない。病気ではないんです。にもかかわらず、いかにも病気らしい名前をつけ、基準値を厳しくすることで、患者を増やしてしまっています。

 血圧について言えば、そもそも人間は老化につれて動脈硬化を起こすものですし、血管壁も硬くなる。そのため、血圧を上げて血液を循環させることは、生命維持に必要なことでしょう。60歳頃から最高血圧が220あったけれど、95歳で大往生した患者さんもいました。年齢とともに、数値が上がっていくのは、病気ではなく自然なことなのです」

 検査結果の数値だけに惑わされて、病人になる必要などない。

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