2013.05.03
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大研究 病院で殺されないために知っておくべきこと「検査」のウソ——病人はこうして作られる 第1部 これでは病人が増えるだけなぜ「基準値」はこんなにいい加減なのか

週刊現代 プロフィール

「日本糖尿病学会は5・8%までは異常ではないと言い続けていたのに、いわゆるメタボ(メタボリックシンドローム)健診が始まった途端、根拠がないにもかかわらず、5・2%を超えると異常であるように基準値を変えてしまいました。それだけで何百万人もの人が『病人』にされてしまったのです」(関東医療クリニック院長・松本光正医師)

 生活が不規則になりがちなサラリーマンには特に気になるコレステロールの値も同様だ。

 血中コレステロールの基準値が登場するのは、1976年出版の『内科診断学』(八版)という医学教科書。そこでは、130~250mg/dlとされていた。ところが'90年代から150~220に変更された。さらに現在では、総コレステロールだけを検査するのは意味がないとされ、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールに分けて検査されている。そもそも、検査の方法さえもが移り変わっているのだ。

「医は算術」なのか

 だいたい新たな検査を始めれば、それだけ「病人」の数が増えるのは自明の理。'08年に日本でメタボ健診がスタートしてから、健康診断では必ず腹囲が測られるようになったことは、記憶に新しい。生活習慣を改め、病気が発症する前に予防して「医療費を削減する」ことを目標にスタートしたものだったが、現実はその逆を行くものだった。

「メタボ健診にあわせて、糖尿病、血圧などの各学会が新たに厳しい基準を出してきました。それによって、過剰医療が生まれてしまったのです」(前出・岡田医師)

 その検査に根拠はあるのか、そもそもメタボは悪いことなのか、という議論も散々巻き起こり、検査自体意味がないのではと批判も噴出した。現在、厚労省は新たな健診プログラムを検討中だというが、このメタボ健診にかけた税金は実に500億円に上っている。

 メタボ健診だけではなく、最終ページ下に記したような、新たな検査方法が次々と出てくることによって、弊害も生まれている。もちろん、早期発見による恩恵は大きい。だが一方で、30年前では見つけられなかったような病気の兆候が見つかることで、その後、薬を飲み続けなければならなくなるような事態も起きてくる。

 最近普及しつつある脳ドックでは、脳の動脈瘤や血管が詰まった部分を見つけるためにMRAやMRIの検査が行われ、これまでには見つからなかったごく小さな腫瘍などが見つけられる。これにより、手術をするほどではないが、経過観察が必要な「病人」となり、ずっと病院と付き合っていかなくてはならなくなるのだ。

 そもそも、検査は詳しくやればやるほど「異常」が増える仕組みになっている。

「たとえば健康診断の場合、1項目検査すれば95%の確率で基準値内に収まりますが、検査項目を増やせば増やすほど『異常』も増えます。確率論でいえば、20項目検査するとすべてが基準値内で収まる人は35・8%しかいなくなる。30項目の検査なら21・5%です。検査項目が多ければ多いほど、何かしらひっかかるようにできている」(前出・近藤医師)

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