2013.05.03
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大研究 病院で殺されないために知っておくべきこと「検査」のウソ——病人はこうして作られる 第1部 これでは病人が増えるだけなぜ「基準値」はこんなにいい加減なのか

週刊現代 プロフィール

 健康かどうかは検査しなければわからないのだけれど、検査した数字を判断するためには、本当に健康だと裏付けられた人のデータが必要になる。でもそれがないから堂々巡りになっているのです。この状況から逃れる方法は、ほぼないでしょう」

 これだからこそ、検査の基準は混乱を極める。ちなみに、以前は基準値のことを「正常値」と言っていたという。呼び方が変わったのも、うなずける。

 最終ページに記したのは、首都圏にある総合病院の26年前と現在の基準値の推移だ。この表からもわかるとおり、同じ病院であってもその時期によって被験者が異なるため、基準値が上がったり下がったりしている。たとえば血糖値が110mg/dlだった人は、'87年の時点では「異常なし」だったのに、現在は「要注意」と判定が出てしまうわけだ。

このままでは全国民が病人に

 現在では、基準値を統一する動きもあり、どの医療機関でも、大きなばらつきはなくなってきたというが、まだ完璧ではない。

 さらにもう一つ、押さえておくべきなのは、検査機関ごとに統計をとって決める右の基準値のほかに、各学会が示したガイドラインに基づく基準値があるということだ。その中には、健康か病気予備軍かを測るモノサシとして使われている数値も多い。が、これも頭から信じていたら危ない。

 たとえば血圧。

「1960年代、私が医学生だった頃に広く使われていた『内科診断学』(七版)という教科書には、血圧の基準値は、最高血圧が150mmHg、最低血圧が100mmHg(以下150/100のように表記)とされていました」(前出・中原医師)

 ところが'70年代に世界保健機関(WHO)が160/95の基準値を出すと、日本もそれに合わせ、さらに、2000年には、日本高血圧学会は140/90と基準を厳しくした。

「この基準値の変更によって、今まで健康だとされていた人が、高血圧と診断され、治療を受けることになった。新規の患者数は2100万人です。これまでの患者を合わせると、3700万もの人数になります」(前出・近藤医師)

 糖尿病のチェックに欠かせない血糖値も、140mg/dlだった基準値が'99年に126に、その後も110から100に引き下げられている。これにより、患者数は劇的に増加する。前出の岡田医師によると、「血糖値の基準値を10下げると、そこからはみ出る人が2・5倍増える」という。現在の糖尿病患者数は270万人と言われているが、もしここで基準値が10厳しくなったら、一気に675万人に増えるのだから恐ろしい。

 同じく糖尿病と密接な関係のあるグリコヘモグロビン(HbA1c/過去1~2ヵ月の平均的な血糖値を示す)の基準値も、根拠なく改定された過去がある。

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