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「天才」と呼ばれた人が、本物の「天才」に出会ったとき

週刊現代 プロフィール

 脳の働きの左右差は、イメージ処理や図形認識、また音楽など芸術的なものは右脳、論理や分析、計算など言語に伴うものは左脳の機能と言われている。だが堀内の場合は、右脳を使って暗算をしていた。常人とは使う脳の部位からして違うのだ。

 そんな堀内が「神様のような人」と断言するのが、珠算名人・土屋宏明(26歳)である。珠算名人とは、2年に1度行われる珠算名人位決定戦の優勝者のみが名乗ることを許される、珠算界最高の称号である。土屋はその名人戦を、前人未到の7連覇中だ。堀内がその凄まじさを解説する。

「土屋さんは私の3歳年上で、これまで何度も対戦したことがあるんですが、まるでものが違う。問題が簡単なときは勝ったこともあるんですが、ハイレベルになればなるほど勝ち目が薄くなります。

 例えば名人戦でぶつかったとき、かけ算とわり算の計算を6題解いて、できた瞬間にボタンを押す方式で対決しました。私のタイムはだいたい30秒前後。上位陣の実力は拮抗しているので、0・01秒単位の争いになるのが普通なんです。でも、土屋さんとやると、5秒とか、圧倒的に先に押されてしまう」

 土屋がはじめて名人位を獲得したのは中学2年生の時。翌年には世界大会に出場し、世界一にも輝いた。頂点を極めた土屋の絶対的な強さはほとんど神がかって見える。それでも堀内はさじを投げることはない。

「私は天才ではありません。ただ練習を誰よりしている自信はあります。土屋さんは社会人ということもあって、『あまり練習できてない』と謙遜なさるんですが、きっと私以上に努力されていると思うんです。だって、昨年7月、名人を7連覇したとき、土屋さんはボロボロになって泣いていたんですよ。土屋さんはきっと努力の天才なんです」

 アメリカのコラムニスト、マリリン・ボス・サバント(66歳)のIQは228。かつてギネスブックが認定した人類で最もIQの高い人物である。IQが高すぎるゆえに、米国内では「コラムニストなんて辞めて、恵まれた知性をもっと人のために使え」という声もあるほどだ。

 サバントが認める天才とは一体どういう人なのか、いままで出会った天才について尋ねるとこのような回答が返ってきた。

「人の頭の良さは30分も話せば正確にわかります。情報をどれくらいの速さと正確さで処理できるかをみればいいのですから簡単です。天才と呼ばれる人にもたくさん会いました。

 しかし残念ながら、私が生きてきたなかで、自分より頭がいいと感じた人は、一人もいませんでした」

 世界一の天才は、もしかしたら世界一孤独な人間なのかもしれない。

「週刊現代」2013年4月20日号より

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