【米国の不動産王ドナルド・トランプ(3)】投資の失敗、浮気で「世界一貧乏な男」へ。復活を助けたのは番組のホスト役だった

福田 和也

敗北からカムバックした人間に敬意をもつのが、アメリカ

 けれども、トランプは帰ってきた。

 一九九七年、フォーブスは、トランプの資産を四億五千万ドルと推定した。

 この資産額は、全米四百人の資産家の、ほぼ最下位という位置であるが、一度、「世界一貧乏な男」だった人物としては、なかなかのポジションではないだろうか。

 プレイボーイ誌のインタビューにたいして、トランプは、こう答えている。

俺は専門家と称する連中に頼りすぎたんだ。ハーバードやワートンを出た連中にね。彼らは驚くほど頭が切れるし要領もいい。だが彼らにビジネス感覚がなかったら、一巻の終わりさ。俺はビジネスをそういう連中に任せすぎていたんだ」(『PLAYBOY』一九九七年七月号)

 トランプの復活を助けたのは、何といっても、彼自身が作りあげた、ドナルド・トランプという「ブランド」の強さだろう。

 ビル・ゲイツは、卓越した経営者ではあるけれど、彼はブランドたりえない。

 しかし、「トランプ」の名を冠すると、すべてが輝きだす。もちろん、その成金趣味に眉をひそめる人たちも少なくないだろうが、基本的にアメリカ人は派手好きだし、何といってもアメリカには、一度、敗北を経験しながら、カムバックした人間にたいして、敬意をもって拍手をするという文化があるからだ。

トランプ、愛人と再婚 '93年、元モデルの妻と離婚後に、元モデルのマーラ・メイプルズ(写真右)と結婚。'99年に再び離婚したトランプは、'05年、モデルの現妻・メラニアと結婚

 その復活を助けた大きな要因が、視聴者参加型番組『アプレンティス(見習い)』でのホスト役であった。

『アプレンティス』は、二十万人ほどの応募者から厳選された男女各八人の参加者が二チームに分かれて、「レモネードの材料の仕入れ」や「旅行代理店の企画」、「イベント運営」といった案件にトライする。そうして、毎週、負けた方のチームが一人ずつ脱落していく、というルールなのだが、その脱落者を指定するのが、トランプの役どころなのだ。

『アプレンティス』は、経営者たちにも好評だという。一流のビジネススクールを、いい成績で卒業しても、現場では役に立たないスタッフは、少なくない。実地で、経営や商売の本質を学ぶ事が出来る、『アプレンティス』は高い評価を得ている。

 実際に、『アプレンティス』の一位をかちとると、トランプから経営者見習いとして一年間、事業を任せられ、二十五万ドルの年収を得られる事になっているのだ。