「天才」と呼ばれた人が、本物の「天才」に出会ったとき

神童東大生「オレは大したことない」
週刊現代 プロフィール

僕は頭がいい、というのは問題発見能力が高いということだと思うんです。一般に言われる、学校の成績などの頭の良さは、与えられた問題を解決する能力ですが、何もない状態で問題を発見する能力とは根本的に違う。彼は後者の能力が非常に高い」

思考がジャンプする

世界には様々な天才発明家たちが存在する。39歳にして、NTTの研究員からマサチューセッツ工科大学メディアラボに転身し、教授となった情報工学者・石井裕(57歳)が天才として挙げたのは、コンピュータのマウスを開発したことで知られる発明家、ダグラス・エンゲルバート(88歳)である。

「アウトラインプロセッサー、マルチウィンドウ、ハイパーテキストなど、彼が45年前に発明したコンピュータ技術のデモは、いま見ても新鮮です。45年もの間、コンピュータの世界には彼の発明を超える進歩はなかったわけです。

そんな彼が一度だけ私のラボを訪れたことがありました。私はここぞとばかりに発明品のデモを見せました。彼は目を輝かせて賛辞を贈ってくれました。あれは私の最大の自慢であり、最高の瞬間でした」

世界最速の電気自動車「Eliica」を開発した慶応義塾大学名誉教授の清水浩は、天才にはまず「3つのP」が必要だと言う。

「まず、書類を書く能力である『ペーパー』、そしてそれをどう表現するかという『パフォーマンス』、最後に人とうまくやれるかという『パーソナリティ』です。この3つは一般社会におけるエリートの条件。天才はこれに加え、思考の飛躍『ジャンプ』ができ、それを具現化できることが条件になる。思考が一見脈絡もないところにジャンプできる人というのは、実に少なく、それに成功できる人というのはさらに少ない」

 

清水が挙げた天才の名前は、意外なものだった。

「ベネッセ会長の福武總一郎さん(87歳)です。家業の福武書店を継ぎ、ここまで発展させただけでなく、突然介護ビジネスを始めたり、英会話のベルリッツを買収する。まさに思考がジャンプしている。

出会いは4年前です。突然『電気自動車が見たい』と研究室に来られました。そのときの決断の早さには驚きました。試乗して急加速を体感すると、『これはモノになる。すぐに会社をつくりなさい』と出資をして方向性を示したきり、事業にはまるで口を出さない。こういう人が天才として成功を収めるのだな、と感心しました」

天才もひれ伏す大天才の共通点、それは常人には決して見えない「景色」が見えていることのようだ。

「週刊現代」2013年4月20日号より