独占インタビュー 大谷翔平 打撃コーチは気が付いた

週刊現代 プロフィール

何をやらせても余裕がある

 それでも大塚コーチには、「難しい選手」という実感はないという。

「なにより自分で考えられる子ですからね。『糸井さんの場合はこうでしたよね』と、他人のプレーを見て吸収しようとしている」

 大塚コーチは時折こんなことを感じるそうだ。

「守備だけじゃなくて、走塁のときでも、よく話を聞くし、相談に来る。それで、ちゃんとやってくれるわけだけど、『あれ、コイツ、オレのこと立ててくれてるんじゃないか』って思うことがあるんです。僕も今年から初めて(のコーチ)ですから。あの笑顔も、そういう笑顔なんじゃないかなって(笑)。本当は違うにしても、そう思わせるほどの余裕がありますよね」

 今季の球界最大の関心事である「二刀流」への挑戦もさることながら、開幕スタメンに2安打デビュー、そしてそもそも「アメリカ行き」を宣言していた入団前から、並の高校生なら身がすくむほどの注目を一身に集めてきた。だが、そうした中で大谷が日々周囲に見せるのは、大塚コーチの言う「余裕」だった。

 開幕戦、こんなことがあった。打席での大谷が、「口をパクパクさせていた」と、一部のファンの間で話題になったのだ。

「どうやら応援歌のリズムに合わせて、『パッパパ~』って口ずさんでいたようですよ」(別のスポーツ紙記者)

 まだ、「いずれどちらかに選ぶべき」という意見はある。現場も手探りの状態だ。

 しかし練習のたび、打席のたび、試合のたびに見せる「成長」。そして彼のまとう「余裕」が、我々にも解説者にも、そしてコーチにも、「夢」を与えてくれる。

 最後に渡辺コーチは言う。

「二軍で鍛えたほうがいいという意見も耳にしますが、私個人の考えを言えば、このまま一軍にいたほうがいい。『一軍で身体が鍛えられる』、そういうタイプですよ、大谷は。もちろん確信はないですよ、三十何年野球やっていて、二刀流なんて育てたことないですから。

 100%野手に集中したら……そういう想像をしないといえば嘘になるけど、ぼくら打撃コーチからしても、投げているのを見たら『投げるのも捨てられないなあ』となる。毎日、毎打席発見があるわけですから。シーズンが始まって、キャンプの時以上にそう思う。いやいや、楽しみですよ」

「週刊現代」2013年4月20日号より