NTTはどこへ行くのか
【第5章】NTTグループと海外進出の歴史(3)
脱電話サービスに追い込まれたNTTコム

NTTコミュニケーションズ本社(出典:WikiMedia)

第5章(2)はこちらをご覧ください。

長距離電話サービスが消えてゆく

 今回は、グループの事業会社のなかでも、国際市場の開拓を担ってきたNTTコミュニケーションズを見てみましょう。

 同社はNTTが分割されたときに設立が決められ、1999年5月に生まれましたが、NTT法の規制が適用されませんでした。これは、なぜでしょうか。それは、同社がNTT本体から受け継いだサービス分野に理由があります。

 長距離通信や電話の付加価値サービス、インターネット(OCN)などを業務とする同社は国際通信事業にも参入しましたが、これらは民間の参入を促し、競争を促進させる分野だったからです。つまり、NTTグループであっても、同社は新規参入企業と同じ競争にさらされるため、規制は掛からなかったのです。

 ただ、同社もインターネットによる激しい時代の変化に翻弄されます。もっとも大きな収益源だった長距離電話サービスは、急激な料金低下で同社を支えることができなくなってゆくからです。

 アメリカでも日本でも、昔は大手が長距離電話サービスで利益を出していました。しかし、技術革新によって長距離通信はどんどんコストが安くなり、それに伴い料金も下がってゆきました。

 たとえば「東京と大阪間の長距離電話料金」を調べてみると、NTTが分割された1997年にはNTTが3分110円、競争相手が同100円でしたが、翌98年には両者が90円で並び、2001年には80円へと下がっています。その2001年には国際・市外・市内の事業者を選択できるマイラインサービスが始まり、激しい料金競争が巻き起こりました。

 そして、2003年にはブロードバンドを利用するIP電話(050番電話)も登場します。このIP電話は「長距離通話を売っても収益を出せない」ところまで通信事業者を追い詰めてしまいます。

 現在、固定電話は全国どこに掛けても、高くて8円(3分)程度、インターネットとの抱き合わせサービスなら無料(ネット接続料金に含まれる)にまで下がってしまいました。(出典 総務省、NTT東日本、KDDI各社)

 ちなみに、NTTが株式会社になった1985年、東京大阪間は3分で400円、競合相手は同300円ぐらいでした。つまり、20年間ほどで料金は「50分の1以下」に下がったわけです。こうした激しい変化に対応し、NTTコミュニケーションズはマイラインサービス競争を最後に戦略を転換します。

 同社はグループ内で最初に「脱固定電話サービス」に挑戦することになったのです。

 以来、同社は国内・国際におけるデータサービスなど既存の電話サービスからの脱却をはかります。特に、NTTグループにおける海外市場の開拓を担い、現在は海外31ヵ国、87都市で業務を展開し、その社員数は8000名を超えます。(2012年3月末現在)

 そして現在、NTTコミュニケーションズはグループ内における企業向けクラウド・ビジネスの推進役を演じています。最近は長距離電話という負の遺産を清算し、厳しいコストダウンを続けながら、なんとか増益基調へと向かっています。

 今後、同社はNTTグループにおける海外市場開拓とクラウド・ビジネスの展開においてますます重要な役割を担うことになるでしょう。

NTTコミュニケーションズのデータセンターマップ
この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら