大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』著者船橋洋一に藤野英人が聞く【後編】 「原発事故が明らかにした『権力のカラクリ』を国民が学ばなければ危機に強い社会はできない」

船橋: ええ。朝日新聞の『プロメテウスの罠』もよくやっていると思います。NHKも、それから東京新聞もそうです。

 ただ、私は対応を迫られた組織の責任者が何を感じ、どう行動したのかに焦点を当てました。彼らは、辛い決断をする立場にあります。弱者に身を寄せているだけではその決断はできませんし、取材する側もまた、決断の背景に何があったのかを明らかにすることはできません。

藤野: 船橋さんは長く経済畑にいらして、また、外交に関しても多くの取材の経験がありますが、そういったときの覗き見と、今回の覗き見とで、相違点はありましたか。

船橋: 私が覗き見るのに情熱を燃やしているのは、権力のカラクリなんです。そしてカラクリは、危機のときにこそ、見えてくるものだと思っています。

 私の好きな佐々木幸綱の歌にこういうのがあります。

〈 国家とは川の流れの白波の過ぎての後も底はさらさず 〉

 権力の構造と構図はなかなか見えないものです。しかし、国民は国家と権力のカラクリを知るべきだと私は思いますし、そのカラクリを暴くことが、記者の仕事だと思っています。国民はカラクリを知ってこそ、戦う武器を手に入れることができるのです。

藤野: 権力のカラクリを見極めるときに必要なものはなんですか。

船橋: 批判精神です。批判のための批判ではなく、権力をウォッチするための批判精神です。

競争力と復元力の乖離

藤野: 今回の事故を通じて、今後に生かせる教訓は得られたと言えるでしょうか。

船橋: 問題点は明確になりましたね。

 今年1月、ダボスで開かれた世界経済フォーラムで国別のレジリエンス指数が発表されました。これは、危機に遭遇しても、復元していく力のことです。日本は67位。成熟した民主主義国家のなかで、圧倒的な下位です。ダボス会議では毎年国際競争力も発表してきましたが、日本ほどこのふたつの指数に開きがある国はありません。

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