大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』著者船橋洋一に藤野英人が聞く【後編】 「原発事故が明らかにした『権力のカラクリ』を国民が学ばなければ危機に強い社会はできない」

 その不満が爆発したのが16日です。藤﨑一朗駐米アメリカ特命全権大使(当時)を日に4度も呼びつけて「このままでは日本は"nuclear wasteland"、つまり核の荒廃地になる」と言い、「日本には、"heroic sacrifice"まで覚悟して欲しい」とまで言っているのです。大変に厳しい言葉です。

藤野: しかし、日本も決して米国をないがしろにしていたわけではないですよね。悪人はいなかったと思います。

船橋: その通りです。

 こんなエピソードもあります。ジョン・ルース駐日大使は3月14日、枝野さんから話を聞こうと探し回るのですが、この日は第一原発の2号機が瀬戸際を迎えていて、電話に出られる状況ではなかったのです。

 ようやく電話が繋がったのは夜11時頃。このときルース大使は、枝野さんに対して、官邸のしかるべき場所に米国の職員を置かせて欲しいと申し出ています。そうしないと、連携ができないというわけです。

藤野: 枝野さんはなんと答えましたか。

船橋: 「できない。それは主権侵害だ」と返しています。おそらくこの衝突が、日米の間で最も緊張感が高まった瞬間でしょう。

 「ノー」と言った官邸中枢の政治家たちの頭の中には、進駐軍のイメージがありました。日本がアメリカに統治されるイメージが世界に広がることを恐れたのです。日本は禁治産者か、と。

この本が楽譜に見えた理由

藤野: それは確か、菅さんも同じようなことを言っていましたね。

船橋: 例の、東電本店での10分間の絶叫の中でそのことに触れています。「東電が逃げたら、アメリカに占領される」というようなことを言っているのです。

 しかし、ここが大変興味深いところで、アメリカはそんなことは一切考えていないんです。むしろ、東京まで放射能汚染されたらどうやって撤退するかをひそかに考えています。

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