大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』著者船橋洋一に藤野英人が聞く【後編】 「原発事故が明らかにした『権力のカラクリ』を国民が学ばなければ危機に強い社会はできない」

藤野: 私には、そうやって表明される意見の中に、恐ろしいと感じるものもあります。政府の中枢には、すべての情報を把握している人がいると信じている人が少なからずいたからです。そしてその中枢の人物は、公開する情報をコントロールしていると信じている。

 そう思い込むことも恐ろしいですが、しかし現実はもっと恐ろしくて、誰も何もコントロールできていなかった。

自民党政権ならうまくやれたのか

船橋: 政府の広報も不十分でした。彼らも、必ずしも国民を騙そうとしてはいません。しかし政府というのは、国民に対して「私たちも知りません、わかりません」と表明するのが下手な機構です。SNSは、そういった政府の見解とは独立して、起きている事象を評価できる場になりました。

 たとえば、3月15日に、東京大学の早野龍悟教授はSPEEDIの稼働状況についてツイートしています。これは、独立した立場の人が、公開された情報を評価し、パッケージして伝えていくという動きの始まりです。

 今後も、危機的な状況が起きたときには、政府などに対抗できるしっかりとした現状認識が生まれ、広がっていくでしょう。公開情報を的確に読み解き分析できる人と、そうでない人との差が広がっていくことにもなります。

藤野: 3.11はちょうど、ツイッターやフェイスブック、ニコニコ動画の勃興期に起こりました。

船橋: 全く新しい時代に入りました。政府も、そうやってクリティカルに見られていることを知っておかないと、今後、危機管理はできません。

 しかし、早野教授のように、学者の良心に基づいて見解を提供する人に対して、東大内部にも批判的な人もいました。つまり、早野教授の行動は、政府の危機管理を妨げる懸念があるというわけです。気象学会も同じスタンスでした。国民に対する広報は、従来通り政府がシングルボイスでやるべきだとするものです。

編集部からのお知らせ!
ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/