大宅賞受賞『カウントダウン・メルトダウン』著者船橋洋一に藤野英人が聞く【前編】 「菅首相が極秘につくらせた『最悪シナリオ』を入手したとき、この本の取材は始まった」

藤野: 船橋さんはこの本の出版前に、一般財団法人日本再建イニシアティブの理事長で、「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」のプロジェクトリーダーとして検証作業を続けていました。調査報告書も出版されていますね。

船橋: ええ。遡りますと、2011年の初頭に、私は仲間と一緒に外交・保安をテーマとしたシンクタンクを作ろうかと話を始めたところでした。そうしたら、3.11が起きました。戦後最大の危機です。

 事故はなぜ起きたのか、なぜ拡大を防げなかったのか。当然、国も検証をするでしょうが、政府から独立した形でもやる必要があると考えました。ただ、それを行うにはプラットフォームが必要ですのでいろいろ可能性を探りましたが、いっそのことそのためにシンクタンクを作ってしまおうと思い、同時並行的に取りかかりました。シンクタンクの方が時間がかかり民間事故調の方を先行させた次第です。

 大御所に委員に就いていただき、若い研究者や弁護士、コンサルタントやジャーナリストには、ワーキンググループで活動してもらいました。その成果が、3.11から1年を前にして出版された『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。

菅首相が極秘につくらせていた最悪シナリオ

藤野: そうやって成果を出したにもかかわらず、またあえてこの『カウントダウン・メルトダウン』を書こうと思われたのはなぜですか。

船橋: 報告書に収められなかったものがあるからです

藤野: それはなんですか。

船橋: 菅さんが極秘に作らせていた"最悪のシナリオ"です。たった4部しか作られず、コピーは厳禁、回収が前提というこのシナリオを、私は2011年12月末に、手に入れることができました。

 最初の印象は、「よくこんなものを作ったな」。しかし、民間事故調の報告書に掲載するには、十分な検証をする時間がなく、報告書では、このシナリオを付録として最低限の背景説明を記載しました。

 しかし、その背後のストーリーをもっと知りたいという気持ちがとまらなくなり、報告書発表後、取材を始めたのです。『最悪のシナリオ物語』を書けるのではないかと思ったからです。