学校では教えない「考え方のコツ」を「計算ミスする数学者」に学ぶ

『「超」入門 微分積分』前書き
神永 正博 プロフィール

 私は南の国が好きで、2010 年度はインドで過ごしました。チェンナイ(旧マドラス)にある数理科学研究所で研究させていただいたのですが、インドという国だけでなく、インド人の研究の仕方にも魅了されました。

 中でも驚かされたのは、彼らがあまり計算をしないことです。もちろん、まったくしないわけではありませんが、それよりも考える時間が長い。紙がもったいないからなのかと思うほど。「紙と鉛筆さえあれば研究できる」とは数学者の常套句ですが、インド人なら「肝心の頭がないじゃないか」と笑うかもしれません。数学の研究に使うのは頭だ、ということを思い知る出来事でした。

 インド人数学者たちは、頭の中で計算しているのでしょうか? なにしろ20×20 までの九九(九九じゃないけど(笑))を暗唱できる人たちです。そのくらいのことやってのけるんじゃないの……なんて思うかもしれませんね。

 でも、そんなことはありません。彼らは、イメージで考えているのです。最終的に計算する前に、イメージで考え、正しい道を探ります。この段階がとても大事なのです。ここで正しい道筋をつかめば、計算は何とかなることが多いのです。

 本書では、微積分の本質=「考え方のコツ」を重視しています。たとえば、第1章では積分記号はほとんど出てこないので、これで本当に理解できるのかな、と心配になるかもしれません。しかし、第1章で微積分の本質に触れておけば、第2章以降で登場するさまざまな公式や数式が、意外なほどするすると理解できるはずです。

 ちょっと硬い話になりますが、微積分の本質は、方法論にあります。ようするに、考え方の「コツ」をつかんでしまえば、複雑な数式の意味も理解できるようになります。そうなればしめたもので、後は必要に応じて技術を身につけていけばいいのです。反対に、「コツ」をつかまずに技術から入ろうとすれば、微積分の勉強は砂を噛むような苦行になってしまうでしょう。

 計算がほんの少しわからなくなっても、気にする必要はありません。最初から全部わからなくても大丈夫。リラックスして、のんびり微積分の本質に迫っていきましょう。

目次
第1章 積分とはどういうことか
 積分の存在意義
 2つの思考実験
 切り口を見よ
 感覚と論理

第2章 微分とはどういうことか
 微分の存在意義
 さまざまな関数たち
 微分は下心をもってせよ

第3章 微積分の可能性を探る
 1800年目の真実
 穴を埋める
 曲がりなりにも
 微積分の正体

著者 神永正博(かみなが・まさひろ)
1967年東京都生まれ。博士(理学)。東北学院大学工学部教授。2010年度は、インドの数理科学研究所(IMSc)にて共同研究。専門分野は微分積分学を発展させた解析学と、情報セキュリティ。解析学における研究対象は、量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式。著書に、『ウソを見破る統計学』(講談社ブルーバックス)、『食える数学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
『「超」入門 微分積分』
学校では教えてくれない「考え方のコツ」

著者:神永正博

発行年月日:2012/09/20
ページ数:225
シリーズ通巻番号:B1786

定価(税込):924円 ⇒本を購入する(Amazon)
(前書きおよび著者情報は2012年9月20日現在のものです)