村山先生の最高傑作! 『宇宙になぜ我々が存在するのか』

最新素粒子論入門
村山 斉 プロフィール

 実は、よくよく調べてみると、物質は反物質よりも数が多かったのです。

 計算してみると、一〇億分の二ぐらい物質の方が反物質よりも多くあったので、反物質が全部なくなっても、物質が残ることができたと考えられています。とはいうものの、物質と反物質はどんなときもペアで生成していたので、物質と反物質はきっちり同じ数だけ誕生していたはずです。そして、ペアでないと消滅できないので、反物質が存在していた数だけ物質も消滅したはずです。どちらか片方だけで消滅したということはないので、ふつうに考えればこの宇宙には何も残らずに、物質も反物質もない世界になるはずでした。

 でも、私たちはこの宇宙に存在します。これはもともと同じ数だった物質と反物質を、途中で誰かが反物質をつまんで、物質の方に移し替えたのではないでしょうか。そうでもしない限り、こんなことは起こりません。でも、そんなふうに都合よく、反物質が物質になるのでしょうか。

 これはまさしく、私たちにとって生きるか死ぬかの問題です。反物質はどうして消えてしまったのでしょう。

 実は、もしかしたら、この謎がもうすぐ解けるかもしれないのです。

 その鍵を握っているのは、ニュートリノという小さな粒子だと考えられています。ニュートリノは調べれば調べるほど、不思議な性質をもっていて、暗黒物質やインフレーションと深く関わってくるのかもしれません。もしかしたら、私たちがこの宇宙に生まれることができたのも、ニュートリノのおかげかもしれないのです。それだけではなくヒッグス粒子やインフレーション、そして暗黒物質なども、私たちが生まれてくるために必要であったことがわかっています。

 今から、その謎を解いていき、どうして、私たちがこの宇宙に生まれたのかを考えていきましょう。

目次
第1章 恥ずかしがり屋のニュートリノ
 宇宙はウロボロスのヘビ/宇宙は正体不明の物質で満ちている/
 消えたエネルギー 他
第2章 素粒子の世界
 強い力の正体/弱い力の正体/四つの力の統一に向けて/
 CP対称性の破れ/小林―益川理論の登場 他
第3章 とても不思議なニュートリノの世界
 鍵を握るニュートリノ/ニュートリノの重さ/
 ニュートリノは時間を感じる/カムランドの実験 他
第4章 ものすごく軽いニュートリノの謎
 ニュートリノはいつも左巻き/左巻きの反ニュートリノは超重量級/
 左巻きニュートリノが軽いわけ 他
第5章 ニュートリノはいたずらっ子?
 力の統一とニュートリノ/
 宇宙に私たちがいるのはニュートリノのおかげ/
 ニュートリノで物質と反物質のふるまいを調べる 他
第6章 ヒッグス粒子の正体
 ヒッグス粒子は神の粒子?!/
 一〇〇〇兆回の衝突で一〇個のヒッグス粒子/
 光子とミューオンを探せ/自発的対称性の破れ/
 ヒッグス粒子が冷えて宇宙に秩序が/統一の時代 他
第7章 宇宙になぜ我々が存在するのか
 宇宙は膨らんでいる/ビッグバンの証拠/インフレーション理論/
 素粒子の揺らぎのしわ/宇宙のはじまりに迫る/超ひも理論に期待/
 原子より小さかった宇宙の誕生に迫る/
 宇宙の過去と未来を映し出す「すみれ計画」 他

著者 村山 斉(むらやま・ひとし)
1964年東京生まれ。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校物理教室教授。理学博士。東北大学大学院理学研究科物理学科助手、ローレンス・バークレー国立研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校物理学科助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授。専門は素粒子物理学。2002年、西宮湯川記念賞受賞。
 
『宇宙になぜ我々が存在するのか』
最新素粒子論入門

著者:村山斉

発行年月日:2013/01/20
ページ数:190
シリーズ通巻番号:B1799

定価(税込):840円 ⇒本を購入する(Amazon)


 
(前書きおよび著者情報は2013年1月20日現在のものです)

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