高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~第1部「俗説をただす」より3編、全文掲載~

 【俗説15】
インフレ・ターゲットで物価が上がっても
賃金は上がらないから、国民生活は苦しくなるだけだ。

 円安による輸入品の値上げはすでに始まっており、一方で給料はすぐには上がらない。たしかに家計への影響はあるでしょう。しかし、金融緩和によって着実に景気が回復し、マイルド・インフレになればそれも解消します。

 まずはデータを見てみましょう。デフレが始まったのは1995年ですから、1971年から1994年までの24年間を「インフレ時代」、95年から2011年度の17年間を「デフレ時代」と呼ぶことにし、年ごとに給料の上昇率とインフレ率を比べて、給料の上昇率がインフレ率を上回ったら「勝ち」、インフレ率を下回ったら「負け」とします。

 すると、インフレ時代は21勝3敗で大きく勝ち越しているが、デフレ時代は5勝12敗で完全な負け越しであることがわかります(図9)。

 インフレ時代の平均給与上昇率は7.4%で平均インフレ率は4.9%。それに対してデフレ時代は、平均給与上昇率がマイナス0.7%で平均インフレ率がマイナス0.1%です。これは何を意味しているかというと、デフレ時代は物価も下がるが、それ以上に給料が下がり、家計には厳しい試練の時代ということです。

 逆に、インフレ時代はたしかに物価も上がるが、それを十分に補うだけの給料アップがあり、家計は潤うことになります。

 一部の人は違うというかもしれませんが、10%円安になると輸入価格の上昇を補って、GDPは差し引きでも0.2~0.5%上昇するのです。全体としてパイが増えるなら、政策として実行するのは当然です。逆に円高では、GDPは減ります。政策とはGDPを増やすように行うものなのです。円安で不利益を被る人もいるでしょうが、弱者に対してはパイが増えた分で何らかの対策もできます。