高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~第1部「俗説をただす」より3編、全文掲載~

 反リフレ派の人たちのなかには、これは確立した理論だと主張する人もいるのですが、私の知るかぎり証明されていません。逆に、データ上で明らかになっているのは、先ほども説明しましたが、金融緩和をするとインフレ予想が出て、実質金利が下がるという事実です。

 そして、実質金利が下がることで、為替が安くなって株価が上がる。これは普通の経済理論で、現実に安倍政権で起こったことによって証明されている。株価が上がれば資産効果があらわれるので消費が伸びます。また、為替が安くなると次第に輸出が伸びてくる。さらに、実質金利が下がると、時間差はあるけれど設備投資が伸びます。これらはすべて、経済学のオーソドックスな理論で、すべて実証されていることです。

 「凧ひも理論」を唱える人には、こう聞きたい。「金融緩和によってインフレ予想がでて、実質金利が下がっている現実を否定するのですか」と。あるいは、批判に対してはこう答えれば十分でしょう。「論より証拠。いま目の前で起こっていることを見てください」。

 もう一つ、反リフレ派の人にとっては都合の悪い話を紹介しましょう。ノーベル賞級の経済学者たちが大勢登録しているIGM Forumというアンケートのサイトがあります。ハーバード、プリンストン、イェール、バークレー、スタンフォードなどの一流学者ばかりが、様々な質問に対して「賛成」「反対」を表明して、コメントも書き込んでいるのですが、2013年の1月29日には日本のデフレについて、こんな質問がされています。

 「もしも日本銀行が別の金融政策をとっていたら、1997年以来の日本のデフレは避けられただろうか」

 つまり、日銀の政策が悪かったからデフレになったと思うか、と聞いているわけです。

 その結果はというと、Strongly Agree(まったくそう思う)が43%、Agree(そう思う)が36%。実に約8割が「その通りだ」と考えているのです(Disagree〈そう思わない〉は5%、Uncertain〈よくわからない〉が16%)。

 そして、たとえばダレル・ダフィーというスタンフォード大学の金融論の専門家が、「十分なほどの大規模な金融政策を採用していれば、インフレは実現していたはずだ」とコメントしているように、デフレは極めて貨幣的な現象であるという共通認識が、彼らにはあるのです。

 余談ですが、私はプリンストン大学留学中、講演に来たダレル・ダフィーの話を聞いたことがあります。テーマは忘れましたが、まるで数学の授業のように数式ばかりの講演でした。プリンストンの学生には不評だったのですが、英語よりも数式のほうが得意な私にとっては、とてもわかりやすかったことを覚えています。

 ともあれ、デフレから脱却するためには、思い切っておカネを刷ればいいというのが、世界の経済学をリードしている人たちの標準的な考え方なのです。

 リフレに反対する人には是非とも、英語で論文を書いてほしいと思います。世界の一流たちが唸るような論文を。おそらくは、クレイジーと思われるだけでしょうけど。