高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~第1部「俗説をただす」より3編、全文掲載~

 金融緩和の効果は、「実質金利」が低下することで生じます。たとえ名目金利が「ゼロ金利」であっても、「実質金利」は引き下げることができる。「実質金利」においては、「マイナス金利」も可能なのです。

 実質金利が低下すると、最も敏感に反応するのが資産市場です。日本の実質金利が低下すれば(そしてその際にアメリカの実質金利に変化がなければ)、円安ドル高となります。株式市場では株価が上昇します。「円安」「株高」の効果は比較的早くでてくるのです。

 安倍政権誕生から1ヵ月で起こったことを見れば、これは証明されたようなものでしょう。私が計算したところでは、解散総選挙が事実上決まった2012年11月16日時点で0.7%程度だった予想インフレ率が、安倍自民党圧勝後には0.8%に上昇し、黒田東彦氏の日銀新総裁就任がほぼ固まった3月上旬には1.3%にまで上がりました。

 その結果、円安・株高が一挙に進んだのです。実際にはまだインフレ・ターゲット政策は実施されていないのですが、日銀の姿勢が変わったことで市場は将来のインフレを予想し、それに応じた行動をとった結果、円安と株高が実現したわけです。

 円安になると、輸出による収益が増えます。日本経済の牽引役である輸出産業の業績が円安によって回復することは、ここ数ヵ月の出来事で裏付けられています。また、株高は金融機関や企業の(そして個人投資家の)含み損を改善し、資産健全化につながりますから(資産効果という)投資マインドを刺激します。いずれ消費増にも結びつきます。

 こうして実質金利が下がり、円安・株高によって景気が上向いてくれば、1~2年半程度で企業の設備投資が始まります。これまでのデフレ経済の環境下で企業は内部留保を溜め込んでいますから、それに対応する余裕資金があります。まずはそれを使うのですぐに銀行から融資を受けたりはしませんが、おカネは着実に回り始めます。

『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
著者:高橋洋一
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 そして、ある程度のタイムラグはありますが(2~3年程度)、外部資金にも依存するようになって金融機関の貸し出しも増えていきます。輸出、設備投資、消費は名目GDPを構成する主要な要素ですから、この三つが上昇すればGDPは大きく伸びるのです。これが、金融政策によってデフレを脱却するメカニズムです。量的金融緩和はデフレ退治に有効なのです。

 ところで、日銀やリフレ政策を批判する人たちは、金融政策に関する「凧ひも理論」というものを持ち出して、金融緩和ではデフレを脱却できないといっています。読者のなかにも、この「凧ひも理論」を聞いたことのある人がいるでしょう。

 高く揚がった凧をコントロールするのが凧ひもで、風がないときに無理矢理にひもを引っ張っても凧は揚がらない。つまり、インフレのときに金融を引き締めて景気の過熱を抑えることはできるけれど、デフレのときに景気を引き上げることは不可能だ、というのが「凧ひも理論」です。