アタマはいいけど腕はイマイチ「東大理Ⅲ」〜トップ0.01%の「頭脳」は本当に幸せなのか

東大医学部(理Ⅲ)に合格した人たち
週刊現代 プロフィール

 さらに、東大医学部から名医が誕生しないのは、そもそも「名医」を下に見ているという政治的事情もある。学閥に詳しいジャーナリストの國貞文隆氏が説明する。

「東大医学部の場合、まず東大に残って研究者となり、助教(助手)、准教授(助教授)、教授というコースを選んだ者がエリート。続いて、東大以外の有力大学で研究者となり、教授になる者が二番手。次いで臨床医として国公立の有名病院に勤務する者、そして底辺が開業医です。東大では臨床医は落ちこぼれ扱いなのです」

 ちなみに収入で並べればこの順番は逆になる。開業医は年収数千万、数億もザラな一方で、大学に残れば1000万にも届かない者がほとんど。だが、大学教授には、学会での権力、病院の人事権、製薬会社からの接待など、それを補って余りある有形無形の恩恵があるのも事実である。東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏は言う。

「東大病院では皆が教授を目指すので、研修医を指導する体制が整っていない、ということも言えます。僕がいた神経内科は、指導医の方が常に横にいて丁寧に指導してくれましたが、よその科では指導医がまるで病棟に来ないんですよ。何をしているかというと、研究室にこもって自分の論文を書いている。なんせ教授になるためには、医者としての実務訓練なんかより、論文を書いたほうが近道なんです。そんな環境でまともな医者が育つわけがない。名医なんてもってのほかですよ。東大病院に来る患者さんは可哀想だと思いましたね」

 彼ら東大の人間からすれば、目の前の患者より、教授のポストが重要なのだ。そうしなければ臨床医で一生を終えてしまうことになる。臨床医なんて「私大出がやればいいこと」。開業医にいたっては、名医だろうが、大病院の院長だろうが、「たかが開業医」にすぎない。彼らはただただ教授を目指す。

 こんな話がある。東大医学部出身の医師が、都内の有名公立病院の院長に就任した。その就任パーティは帝国ホテルで華々しく催されたが、彼は「おめでとう」と祝福する友人たちに笑顔ひとつ見せず「俺は東大教授になりたかったんだ……」と告白した—。東大医学部教授とは、彼らにとってそれほど重いのだ。

天皇の手術は手に負えない

 この結果生まれるのが「四行教授」と呼ばれる箸にも棒にもかからない経験不足の教授たちだ。経歴が

 東京大学医学部卒業
 東京大学医学部助手
 東京大学医学部助教授
 東京大学医学部教授

 という4行で終わってしまうような、実務経験が圧倒的に少ない教授を言う。彼らの中には、医師失格と言っていいような、低レベルな医師も存在するという。ある東大病院職員が明かす。

「『東大医学部生は優秀だけど無能』というのが医療の現場では定説になっています。知識があってもそれを生かすノウハウがない。