二宮清純 レポートプロ野球開幕特別版
牧田和久(西武ライオンズ投手)サブマリンの美学

現代ビジネス編集部 プロフィール

 振り返って、牧田は語る。

「あの時はスライダーが曲がって、三振を何個もとった。だから、そんな表現になったんでしょうね。

 正直言って外国のバッターには打たれる気がしなかった。当たってもファウル。高めの真っすぐや外のスライダーは前にも飛ばなかった。特に高めに関してはボールとバットの接点がないような感じでしたね」

 だからこそ、と思うのだ。準決勝のプエルトリコ戦、0対1と1点ビハインドの場面で牧田を早めに投入しても良かったのではないかと。結局、6回から登板した能見篤史が7回に現役バリバリのメジャーリーガー、アレックス・リオスに手痛い2ランを浴び、これが決勝点となった。遅くとも能見が前のバッターにヒットを許した段階でサブマリンに"火消し"を託すべきだったのではないか……。

技巧派投手の真骨頂

 これを結果論で済まされてしまっては、野球談議は成り立たない。第2回WBCで投手コーチを務め、日本の連覇に貢献した山田久志に感想を求めた。

「抑え投手を出さずに負けるなんて、こんなもったいないことはない。今回のWBCで牧田は抑えを任されていたのかもしれないけど、1回負けたら終わりの国際大会では、前倒ししてでも使うべき。僕なら6回の頭から使っていたね。あそこは、もう1点もやれない展開なんだから。テレビを観ながら"早く代えろ!"と叫んでいましたよ(笑)」

 当の牧田は、どんな思いだったのか?

「あの球場(AT&Tパーク)はブルペンにピッチャーの待機場所がなかったので、投手コーチから"肩をつくってくれ"と言われても、二人しかいけなかった。

 僕は、"後ろの方(試合終盤)で準備してくれ"という話だったので、出番はもう少し後になるだろうと思ってベンチの裏にある、ちょっとした空間でウォーミングアップをしていました。

 その時ですね、2ランが飛び出したのは。投げたかったかと言われれば投げたかったですけど、これだけは仕方ないですね……」

 米国の硬いマウンドや粘着力の強いロージンバッグは気にならなかったのか?

「両方とも気にならなかった。マウンドに関しては、僕は硬い方がいいみたいです。踏み出した足がグッと固定されるというか土を掴んだ方が投げやすい。逆に柔らかいとズルズル行ってしまうでしょう。こっちの方が嫌ですね。

 ロージンバッグについても、僕はアメリカ製の方が好きです。日本はサラサラしているけれど、向こうのはベトベトしている。どちらが滑らないかと言えば、アメリカ製ですね」