高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~序章「金融政策のレジーム・チェンジ」全文掲載~

 結局、「金融政策におけるレジーム・チェンジ」を完遂するには、「制度」と「人」がチェンジする必要がある。「制度」というのは、まさに日銀法の改正。「人」は日銀総裁以下日銀幹部の交代です。

 日銀法改正でポイントとなるのは、まずは日銀総裁の解任権を政府がもつこと。海外の中央銀行法には、実際に解任するかどうかは別に、制度として解任権が入っているものが多い。インフレ・ターゲットの設定も法律のなかできちんと規定する。それから、日銀に「物価の安定」だけでなく、「雇用」についても責任をもたせるよう法律に明記したほうがいい。

 アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の設置法には、「物価の安定」とあわせて「雇用拡大」が目的として明記されているし、いまFRBは「失業率が6・5%を下回らないかぎり金融緩和を続ける」という政策を掲げています。安倍総理は「日銀には雇用拡大も頭に入れてもらいたい」と語っていますが、徹底するにはやはり日銀法で「雇用への責任」を義務付ける必要があります。

 日銀法改正については、安倍総理だけでなく、みんなの党、日本維新の会も積極的な姿勢を見せています。私はみんなの党の渡辺代表、日本維新の会の橋下徹共同代表の政策ブレーンもつとめているので彼らの考えもよく知っています。自民党、みんなの党、日本維新の会、さらには新党改革が一致団結すれば、日銀法改正はすぐにでも政治日程にのぼってくるはずです。

 実際、自民党の山本幸三さん、みんなの党の渡辺代表、日本維新の会の小沢鋭仁国会対策委員長、新党改革の舛添要一代表は「日銀法改正を目指す超党派連絡会」を立ち上げています。これらの方々は金融政策に関する筋金入りの理解者です。そして、こうした動きについては安倍総理ももちろん承知しています。

 一方、「人」の問題では、いうまでもなく、「日銀総裁の交代」が最大の焦点です。

 今回、白川総裁の後任に、金融緩和によるデフレ脱却を唱えてきたリフレ派の黒田東彦氏が就任しました。日銀総裁は、世界標準の経済学をよく理解し、語学が堪能で世界に発信できる人物でなければいけません。加えて、レジーム・チェンジを実感できることが必要です。安倍総理はそうした点を十分に検討した上で黒田氏を人選し、国会もまた十分に考慮した上で同意したのだと信じています。

 日銀にはきわめて独特な「日銀理論」があります。それは「日銀はインフレを管理できない」という驚くべきものです。物価の番人である日銀がインフレを管理できないというのはじつに奇妙だし、世界の中央銀行でこのような主張をするところはどこにもありません。ところが日銀は、この理論に基づいてインフレ目標の導入を拒んできました。

 しかし、レジーム・チェンジは始まったのです。日銀も過去と決別すべきです。黒田新体制の下で、世界標準からかけ離れた日銀理論を葬り去り、新しい日銀に生まれ変わることを期待しています。