高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~序章「金融政策のレジーム・チェンジ」全文掲載~

 日銀は、市場にマネーを供給するために2014年以降、毎月13兆円の金融資産を購入することを決めました。また、期限を定めず、2015年以降も日銀が無期限に国債などの資産を買い続ける方針も決めました。

 しかし、内容を見ると、毎月購入する13兆円の金融資産のうち長期国債は2兆円だけ。買い入れるのは短期国債などがほとんどだから、すぐに償還期限がきて金融資産の残高は増えない。2014年中に増えるのは10兆円だけなのです。日銀は、「現状と同じ程度の金融緩和しかしません」といっているに等しい。

 金融に詳しくない人なら「毎月13兆円」にびっくりするでしょうが、マーケットのプロたちはそんなことでは騙せません。事実、日銀が金融政策を発表した直後、その内容に投資家たちが落胆したために「円高」「株安」に振れています。

 「日銀は、政府・自民党を馬鹿にしています」

 日銀の対応をみて、私は安倍総理にこのように伝えました。金融緩和策の内容が、安倍政権への「面従腹背」そのものだったからです。その後、安倍総理は、日銀がインフレ・ターゲットを受け入れてからは封印していた「日銀法の改正」を、再び口にするようになりました。

 また、ある自民党幹部からも意見を聞かれたので、私は「日銀は政府・自民党を完全になめていますよ」と答え、そのわけをわかりやすく説明しました。翌日には自民党幹部全員が共有する認識になったはずです。

 日銀の白川総裁が最も恐れるのは、日銀法を改正され、政府が総裁の解任権などを手にすることです。それを避けるためにインフレ・ターゲットをいやいやながら呑んだものの、やはり心中では抵抗感が強かったのです。「2%達成は容易ではない」とも白川総裁は発言していますが、新たな金融緩和策をみても、日銀が本当に態度を改めデフレ克服に邁進するようには思えません。

やはり日銀法の改正が必要だ

 なぜこんな中途半端なことになったのでしょうか。原因のひとつは、「共同声明」に法的拘束力がないことです。つまり、「2%」を達成できなかったときの責任の所在がはっきりしていない。日銀に目標達成を迫る法的裏付けもなく、ペナルティもない。

 もうひとつは、「2%」を達成する期限が明確になっておらず、「できるだけ早期に」と書いてあるだけだからです。日銀は、政府との共同声明にこうした弱点があることを見抜き、「面従腹背」でこれまで通りの金融緩和程度でお茶を濁そうとしているのです。