高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~序章「金融政策のレジーム・チェンジ」全文掲載~

 私の知るかぎり、政策に対して現実的な影響力をもつ政治家で金融政策を語れるのは、安倍さんとみんなの党の渡辺喜美さんぐらいではないかと思います。自民党総裁に再び就任した安倍さんは「金融政策」を選挙の争点にまで押し上げたけれども、こんなことは過去にほとんど例がないでしょう。

 ちなみに、インフレ・ターゲットを導入してインフレ目標を決め、大胆な金融緩和によってデフレからの脱却をはかり、緩やかで安定的なインフレにする政策をリフレーション(リフレ)といいます。アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」で成り立っていますが、のちほど説明するように、1本目の矢である大胆な金融政策=リフレ政策こそがアベノミクスの中心です。

日銀は安倍政権を馬鹿にした

 さて、日銀は当初、あきらかに安倍さんをみくびっていました。どうせ何もできないと高をくくっていたのです。ところが、総選挙を控えて、インフレ・ターゲットの必要性を安倍さんが強調するようになると、日銀はあわてて反対姿勢を鮮明にします。日銀の白川方明総裁は「現実的でない」「悪影響が大きい」と記者会見で安倍さんの提案を真っ向から拒否しました。「中央銀行の独立性を尊重してほしい」と常套句を持ち出し牽制を繰り返したのです。

 そんな日銀にとって、選挙で自民党が圧勝したことはまさに悪夢でした。日銀は「政治オンチ」とよくいわれるのですが、まったくそのとおりでした。「独立性」を楯にとる日銀に対して、安倍さんは「政府の意向に従わないようなら日銀法を再び改正する」と明言し、一歩も引かなかったからです。

 安倍総理誕生に怯えた白川総裁は手のひらを返したように服従の意をあらわすようになり、2013年1月22日、ついに白旗をあげて、インフレ・ターゲットを始めると宣言した。安倍さんは選挙で圧勝しただけでなく、日銀との闘いにも完勝したのです。

 デフレ克服のためのインフレ・ターゲットは「アベノミクス」の看板政策となり、株式相場、為替相場にすでに大きな影響を与えています。株価上昇と円高是正が同時に進んでいる。ただし、2013年1月22日は、「金融政策のレジーム・チェンジ」がまだ道半ばであることも示しました。

 この日、政府と日銀が共同声明を発表しましたが、その直前に、日銀は金融政策決定会合を開き、「インフレ目標」を実現するための具体的な金融緩和策を決めています。その内容が、はっきりいって、「共同声明」の趣旨に反するようなしろものだったのです。

 安倍政権と日銀がいっしょに発表した「共同声明」はこう謳っています。

 「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」

 ところが、同じ日に日銀が決めた金融緩和策は、「消費者物価上昇率2%を早期に実現する」とはとても思えない内容だったのです。