高橋洋一著『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
~序章「金融政策のレジーム・チェンジ」全文掲載~

 私は第1次安倍政権のときに総理官邸に常駐して、内閣参事官として安倍総理を支えました。それ以降いまにいたるまで、おりにふれて安倍さんとは話す機会があります。2012年の秋、インフレ・ターゲットという政策をテコにして、自民党総裁選挙を勝ち抜き、総選挙に圧勝する姿をすぐそばで見てもきました。

 インフレ・ターゲットや金融政策について安倍さんから直接いろいろな質問を受けたので、その都度説明もしました。その意味では、巷間いわれるように「金融政策におけるブレーン」のはしくれと言えるのかもしれません。

 私はいま政策の提言をしていますが、インフレ・ターゲットにはとりわけ思い入れが深い。10年以上前から、その必要性を主張してきました。思い返せば、小泉政権で官房長官をしていた安倍さんに、最初にお話ししたのも「日銀問題」でした。

 日銀は、他国の中央銀行に比べても、きわめて高い「独立性」を誇っています。1998年の日銀法改正で獲得したものなのですが、まったくおかしなことに、日銀は「独立性」を楯にとってしばしば政府への協力を拒んできました。

 日銀法改正以降の日本経済の最大の課題はなんといっても「デフレからの脱却」です。ところが日銀はデフレ解消に効く金融緩和に消極的で、世界に例を見ないほどにまでデフレを長期化させてしまった。

 小泉政権時代、私が安倍官房長官に「日銀は『独立性』をはき違えています」と話した際、安倍さんは問題の所在をすぐに理解してくれました。その場には、竹中平蔵総務相、中川秀直自民党政調会長が同席していました(竹中、中川の両氏は本書でもたびたび登場する金融政策のキーマンです)。

『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』
著者:高橋洋一
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 安倍さんの反応は、私には少し意外でした。というのは、たいがいの政治家は「戦中の反省」から、日銀の独立性は当然だと考えていたからです。「日銀に独立性を認めず、国債を引き受けさせて戦費を調達したために、ハイパーインフレが起こった。だから、日銀の独立性は侵してはならない」---政界においてもこれが通り相場でした。

 けれども国際的な常識からいえば、中央銀行に認める「独立性」は、「手段」に関するものです。中央銀行が政府と関係なく、勝手に「政策目標」を決める独立性まで認めているわけではない。中央銀行が政府にそっぽを向いているようでは、金融政策の効果は望めないからです。

 安倍さんははじめからこうした話をすっと理解してくれました。さらに2000年8月のゼロ金利解除(安倍さんは森内閣の官房副長官)と、2006年3月の量的金融緩和解除(安倍さんは小泉内閣の官房長官)という日銀の二つの間違いも明確に理解していました。