【事実関係】
1. 4月1日、露国営ラジオ「ロシアの声」が、ロシアによるイラクへの総額42億米ドル(約3800億円)の武器販売に関する契約が成立したと報じた。
2. 3月25日、ロシア外務省のアレクサンドル・ルカシェビッチ報道官が、国連によるシリアの化学兵器調査の範囲拡大について反対する声明を発表した。
【コメント】
1.
ロシア、米国、EU(欧州連合)は、中東においても力と力の均衡点を探る帝国主義的な外交ゲームを展開している。オバマ第二期政権になり、米国は中東における戦線を静かに縮小している。その隙を見逃さずに、ロシアがイラクとシリアで権益を拡大しつつある。
2.―(2)
2011年のロシアの輸出総額が5220億米ドル(日本外務省HP)であることに鑑み、イラク1国への武器販売額が42億ドル(約3800億円)というのは、かなり大きな輸出になる。ロシアの武器販売にはGRU(軍参謀本部諜報総局)が深く関与している。GRUが表の予算とは別に、武器販売を通じて作った裏金で種々の秘密工作を行っていることは、インテリジェンス業界での常識だ。イラク戦争から10年を経て、再びロシアが「死の商人」として、イラクに乗りこんできたことを示すものである。裏返して言うならば、米国やEU(欧州連合)に、ロシアのイラクにおける武器市場拡大を阻止する力がないということである。
3.―(1)
ロシアはシリアにおいても攻勢を強めている。3月25日の「ロシアの声」によれば、ロシア外務省のルカシェビッチ報道官が、国連によるシリアにおける化学兵器調査の適用範囲拡大に反対する声明を発表した。
3.―(3)
化学兵器調査に関する国連の動きに抵抗し、アサド政権を庇護することによって、ロシアはシリアにおける影響力の強化を図っている。現下の状況で、この流れをイランが後押しすることになる。
3.―(4)
微妙なのはイスラエルの立場だ。イスラエルとシリアは外交関係が・・・・・・