数学や経済学の入門書の分野において、細野真宏さんの本がベストセラーになっています。細野さんの本を用いて、数学や経済学の基礎知識を身に付けることについて、佐藤さんはどのように考えますか?また、細野さんの本を読まれたご経験があれば、細野さんの著作の中では、どの本が一番優れていると思いますか?(匿名希望)
【佐藤優さんの回答】 細野真宏先生の本を用いて、数学や経済学の基礎知識をつけるというのは、とても効果的なアプローチです。お勧めします。私は細野先生の本は、それほどたくさん読んでいません。私が読んだ中では、『極限がほんとうによくわかる本』(小学館)は、微分法の入門として、とても優れた本と思います。
手島龍一さんと佐藤さんの共著『動乱のインテリジェンス』を読みました。対談形式となっておりますが、お二人の議論のレベルが高く、内容が頭に入ってきません。この本を読みこなすための基礎知識を得るためにはどんな本を読めばよいでしょうか?(匿名希望)
【佐藤優さんの回答】 高校生用の政治経済の参考書を読むことを勧めます。例えば、藤井剛『詳説政治・経済研究』(山川出版社)です。この本をマスターすれば、国際政治やインテリジェンスに関する一般書の理解の水準が飛躍的に深まると思います。
アサヒ芸能の連載、「ニッポン有事」についてお伺いします。破廉恥で規格外な外務省職員、国益を損なうことを平気で行い恥じない外務省職員のことがよく分かり、いつも大変面白く拝見しています。一方で、この連載が外務省の若手、特に意欲も能力も高い職員に対して、どのような影響を与えているとお考えでしょうか? モチベーションの高い若手に対し、「うちの会社はダメだな」と失望させモチベーションを落とすようなことはないかと、少しだけ心配しております。先生の御見解をお聞かせ下さい。(SN)
【佐藤優さんの回答】 優れた外交官は、この程度のことで、モチべーションが落ちたりしません。それだから、まったく心配していません。
今春から、『読楽』(徳間書店)に外務省をモデルにしたハレンチ小説を書こうと思っています。完全なフィクションですが、一部の外務官僚は気にするかもしれません。さわりだけを少し記しておきます。
<主な登場人物
ウラジミロフ:ロシア大統領。KGB(ソ連国家保安委員会=秘密警察)出身で、強権政治を行う。
森田義雄(もりたよしお): 元首相。首相時代は人気がなかったが、現在は、「憲政史上最強の元首相」と呼ばれる。ウラジミロフ大統領と個人的に深い信頼関係を持つ日本で唯一の政治家。北方領土問題解決のキーパーソン。
矢部進太郎(やべしんたろう): 首相。保守党総裁。過去、体調不良で1年で首相辞任を余儀なくされる。7年振りに首相にカムバック。新経済政策が順調に進み、国民の支持率も高い。帝国主義化する中国を牽制するために、対露関係の改善を考えている。
釜井親雄(かまいちかお): 外務事務次官。義理を欠き、人情を欠き、平気で恥をかく「サンカク官僚」。人間のクズ。特技は太鼓持ち。リベラル党が政権の座に就いていたときに、頭が弱く、おだてに乗りやすい外相に「大臣の糞のついた尻を私に是非拭かせてください。陰嚢(キンブクロ)も洗わせてください。私が事務方トップになれば、先生を天下人(首相)にすべく全力を尽くします」とゴマをすり、内閣官房副長官補から、外務事務次官に異例の栄転を遂げる。しかし、その直後にリベラル党から保守党への政権交代が起き、矢部首相から遠ざけられる。このまま年金生活に追い込まれることを恐れ、6月の主要国首脳会議(G8サミット)終了後に英国大使に転出することを画策している。
秋月久(あきづきひさし): 外務省ヨーロッパ局長。「要領の秋月」と呼ばれている。能力はあるが、部下からの人望がない。矢部首相、森田元首相からは信頼されている。北方領土交渉に関するシナリオを構築することができる唯一の外務官僚。
久山英機(くやまひでき): 外務省ヨーロッパ局ユーラシア課長。この物語の主人公。以前、北九州製鉄に勤務。この会社では、幹部候補生の新入社員にヘルメット酒を飲ませ、「オンリー・ユー」の替え歌で「オナニーの歌」という猥歌を歌わせる伝統がある。「こんな会社にいては殺されてしまう」と思い、外交官試験を受ける。小心者。モスクワ時代の女性スキャンダルが露見することを恐れている。
ナターシャ:人妻。久山の「筆降ろし」をする。
イワン:ナターシャの夫
都筑峰男(つづきみねお): 元北海道開発庁長官。かつて唯一の外交族と呼ばれた。北方領土秘密交渉に従事。大泉政権の中田麻衣子外相と対立。守旧派の代表と見なされた。国策捜査の対象にされ、東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕される。逮捕後も、衆議院議員に連続当選。最高裁判所で有罪が確定し、失職。ただし、永田町では影響力を持つ。
松岡国雄(まつおかくにお): 在米国デストロイヤー市総領事(元ユーラシア課長)。変態性欲者。「殺人以外のすべての犯罪を犯した男」と外務省内で恐れられている。もともと都築峰男に擦り寄っていたが、都築が国策捜査の対象となると掌を返す。都築峰男バッシングの中心となり、当時の外務省執行部に評価され、ユーラシア課長に就任。前任のユーラシア課長だった秋月久とは、大学の同級生であるにもかかわらず犬猿の仲。リベラル党政権時代にレイプ疑惑が発覚し、外国勤務を希望し、実現。
西郷克也(さいごうかつや): 京都立志社大学世界経済国際問題研究所長。元外務省ヨーロッパ局長。外務省で伝説の卓越した能力を持つロシア専門家。都築峰男に対する国策捜査で自らの逮捕が迫ったので、ヨーロッパに一時亡命した。現在も保守党、リベラル党の有力政治家と良好な関係を持つ。
野下悪次(のしたあくじ): 日本国際関係研究所長。あごひげを生やし、一見、豪快に見えるが、小心者。卑劣漢。中田麻衣子外相下で外務事務次官をつとめた。
佐田勇(さだいさむ): 作家(元外務省主任分析官)。都築峰男とともに東京地検特捜部に逮捕され、東京拘置所に512日間勾留される。そのときの経験を手記にし、職業作家になる。陰険な性格で、真綿で首を絞めるような罠を仕掛けることがある。猫を溺愛する。
第1回プロット
2013年2月、矢部首相特使として、森田元首相がモスクワを訪問する。ウラジミロフ大統領との会談も順調に行われたが、翌日、奇妙なことが起きる。
外交インテリジェンス・アカデミーで行われた森田元首相の演説から、ある箇所が消し去られていた。その背後には、・・・・・・