第27回 遠山元一(その三)
新聞に躍る言葉「株式ブーム」---一般市民が投資熱に見舞われた時代とは

「おだやかになりましたねえ」と声をかけられて、そんな乱暴な時期があったのかしら、と半生を顧みながら、それでも、若い時だって自分は優しかったのだ、と思い込もうとする、自負を漲らせながらの自己問答が、何ともこの人らしい。

 昭和四十七年三月、遠山元一は、療養先の神奈川県吉浜の別荘から、新宿戸山の国立第一病院(現国際医療研究センター)に移送された。

 さほど長い入院にはならないだろう、という見通しはくつがえされ、春から夏へと療養は長引いていた。

 八月九日は、台風が過ぎ去った後、美しい青空が見えたという。

 病窓から、空を見た元一は、「今日は、気分がいいから、髭を剃るか」と云った。

 その数分後に絶命した。

 死因は、心不全。

 信仰に、身を捧げた人物にふさわしい、安らかな臨終だったと云う。

『週刊現代』2013年4月6日号より