"中学受験の神様"日能研・小嶋隆社長に訊く 【前編】
正解のない問題に創造的な答えを出す「レゴ型能力」が必要な時代です

---タッグを組んで、私立の魅力を世の中に伝えていく方針ですか?

 はい、そうして行きます。実は昨年、日能研は、首都圏在住の小学生を持つ保護者を対象にアンケート調査を行ったのですが、意外な結果が出ているんです。

 例えば、私立に行かせる上で、保護者にとって何が一番高いハードルになっているのか。当然、「学費の高さ」が8割くらいを占めるのかと思っていたら、そう答えたのは56.3%。意外と少なかったんです。

 その一方で、「通学圏内に良い学校がないこと」という答えが多かった。麻布や開成などの有名私立は知っていても、それ以外は知らないという保護者が結構いらっしゃるんです。例えば、浅野中学校は神奈川県で難易度が男子校トップ3に入る学校ですが、調査によると、その実力の割に知名度が高いとは言い難い。そのように、まだ私立の魅力が伝わっていない部分があるんです。

 特に、地方のトップクラスの県立高校から東京の難関大学に進学し、有名企業に勤務しているようなお父さんは、首都圏の進学事情がよくわかっていないことが多い。奥さんから「子供に中学受験をさせたい」と言われても、「なぜ私立に行かせる必要があるんだ? 俺は公立高校から有名大学を出て、今は十分な給料をもらっている。子供も公立でいいじゃないか」という反応になるケースがよくあります。

 そういうお父さんに「これなら年間100万円の学費を払ってもいい」と思わせるだけの魅力が、私立にはなければいけません。同時に、その魅力を伝えなければならない。ただし、私学独自の「建学の精神」を説明されたところで、「ならばうちの子をぜひ私立に」とはなりにくいんです。

 アンケートは昨年と、ちょうど10年前の2002年にも行っていまして、両者の結果を比較すると、時代の変化がわかります。一例を挙げると、世帯年収の格差は広がっています。その結果、私立は富裕層の選択肢としては定着したものの、中間層では私学離れが進みました。

 一方で、どれだけ教育費を出してもいいかという「許容教育費」の額は、10年前より全体的に高くなっています。費用面についてはシビアに見ているものの、教育への熱心さはむしろ高まっているわけです。

---塾の存在感も大きくなっているのでしょうか?

 塾にとって、落ちこぼれた子供たちを救うという役割も大切ですが、同時に「吹きこぼれ」も救わなければならないと思います。吹きこぼれとは、勉強ができて、通常の学校の授業内容では物足りないと感じる子供たちです。この言葉を嫌がる人もいますが、やはり優秀なエリートは一定数、存在しますし、日本社会は彼らを大事にしなければなりません。

 日能研には約3万人の生徒がいますが、通っているのは主に小学校4年生以上の生徒ですから、1学年当たり、ざっくり1万人になります。その1万人の中で、トップの100人くらいの子供たちは、本当に勉強が好きなんです。

 サッカーや野球の選手になるような人たちが、子供の頃からリフティングやキャッチボールが好きで好きでたまらないように、優秀な生徒たちは勉強が大好き。やらされているのではなく、自分からやりたがっている。そういう子供たちは、しっかり育ててあげなければいけません。

 「子供に勉強ばかりさせて」と批判的に見る親もいますが、子供たちは別に嫌々やらされているのではなく、自発的に勉強しているのだから、大いに結構なことですよ。こうした「吹きこぼれ」の子供たちの力をさらに伸ばしてあげる場所が、実はないのです。日能研は、それをカバーできると思います。