NTTはどこへ行くのか
【第3章】 モバイル・ブロードバンド(1)
エリクソンの前に立ちはだかる日本の強敵とは

エリクソン社のウルフ・エワードソンCTO (筆者撮影)

第2章(3)はこちらをご覧ください。

 サンフランシスコ市街の北東。ベイブリッジのほど近くにテラ・ギャラリーという3階建ての小さな建物があります。ギャラリーというのですから、本来は芸術作品の展示会場だったのでしょうが、最近はベンチャー・ビジネスがちょっとした催し物に利用しています。こぢんまりした空間は、これから成長するベンチャーにとってはお手頃なのでしょう。

 2012年6月。珍しいことに、通信機器大手のエリクソンがプレス・ブリーフィング(記者説明会)をそこで開催しました。同社のような大企業なら高級ホテルでやりそうなものですが、きっとスケジュールが合わなかったのでしょう。久しく同社を取材していなかった私は、早速出かけることにしました。お目当ては、エリクソンのウルフ・エワードソンCTO(最高技術責任者)との単独会見です。

日本市場を虎視眈々とねらうエリクソン

 欧米に比べると、日本におけるエリクソンの知名度は高くありません。日頃わたしたちが耳にするのは、サムスンやNEC、富士通、モトローラなど、新聞やテレビに登場する端末メーカーばかりです。しかし、世界のテレコミュニケーション業界を見渡したとき、エリクソンの存在は大きなものです。

 たとえば、携帯のネットワーク機器では業界トップ、通信事業者向けサポートやプラットフォーム・ビジネスでも一位か二位の売り上げを誇っています。売り上げベースでの市場占有率は2012年で35%。激しく追い上げる中国のファーウェイ・テクノロジーズをかろうじて抑え、トップを維持しています。

 ハイテク企業の底力は「持っているパテント数に比例する」といわれますが、同社は3万件以上の通信パテントを保有しており、モトローラやクアルコムと並ぶ知財王国を築いています。携帯分野は特に強く、ワールドワイド携帯トラフィック(通信量)の40%以上が同社の機器を経由していると言われています。

 エリクソンにとって、日本は重要なマーケットです。2011年、同社の国別売上で日本はアメリカに次ぐ第2位なのです。しかも、私がCTO(最高技術責任者)のウルフ・エワードソン氏と会見した時期は、ちょうどソフトバンク・モバイルから次世代モバイルのLTEネットワークを受注(東名阪のみ)したところで、同氏も日本を非常に注目していました。

 LTEとはロング・ターム・エボリューションという英語の略で、3G(第三世代)に続く高速なデータ・サービスです。どのくらい早いのかというと、LTEでは固定のDSL(数10から100メガ・ビット秒)並のスピード、その上のLTEアドバンスドでは、現在の光ファイバー(1ギガ・ビット秒)を目指しています。

 こんな話をすると「そんなに携帯が早くなるなら、光ファイバーなんていらないや~」と考える方も多いでしょう。しかし、町中にある携帯のアンテナ部分、つまり携帯無線基地局はそれぞれ光ファイバーでインターネットなどに結ばれています。ですから、広く光ファイバーを張っていないと高速な携帯サービスは実現しません。

 また、携帯サービスが1ギガ・ビット秒になるには、携帯基地局を結ぶ光ファイバーがその100倍以上のスピードにならなければなりません。携帯を早くするには、かならず光ファイバーがその100倍以上早くなければならないというのは、通信ネットワークの基本的なルールです。

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