東大に入れば将来は安泰—そんな甘い時代はとうに終わっている。苦労して狭き門をくぐっても、不幸になる落とし穴はそこら中に隠れている。失敗していった東大生たちの声を集め、徹底検証した。
「合格発表会場で胴上げなんかされちゃって、人目をはばからず喜んでいる受験生っているじゃないですか。実は僕もそのクチなんですけど、そういう人って、だいたい入学した後に不幸が待っているんですよ」(東大経済学部4年生男子)
3月10日、今年も日本最難関の入学試験を突破した受験生たちが、東大本郷キャンパスの名物、赤門から続く銀杏並木で喜びを爆発させた。様々な誘惑を排して、一心不乱に努力を続けてきたのだから、喜びもひとしおだろう。だが、こと東大にかぎっては、そうした無理な努力で入学することは、あまり身のためにならないかもしれない。前出の東大生が続ける。
「あそこまで喜べるのは、よっぽど努力した人、それも入試の手応えに自信がない人です。要は、努力した凡才なんです。そういう人が東大に入ってもいいことはひとつもありません。
僕は静岡の公立高校の出身で、周りに東大を受験する友人もいなかったので、2年間毎日、学校に22時頃まで残って、担任の先生とほとんどマンツーマンで勉強をしてきました。
入学して驚きました。僕は高校時代勉強しかしていない、と断言できるくらい努力してきたんですが、そんななりふり構わずやった、という人はあまりいないようでした。都内の有名私立校出身の同級生に合格発表の話を振って、
『どうせ受かってると思ったから、合格発表は見に行ってないんだ』
と言われたときは衝撃を受けました。カリキュラムが始まっても、差を痛感するばかりで、第3外国語で選択したドイツ語の演習(必修)では、クラスで僕だけ単位が取れず、留年してしまいました」
彼によれば東大生のヒエラルキーは3段階に分けられる。
「一番上は、もう天才と言うしかない、ずば抜けて優秀な学生です。こうした学生は10人に1人いるかいないか。
真ん中はその天才たちと仲良くしていて、試験期間になると天才に試験対策を教えてもらい単位を集める要領のいい奴ら。東大内に知り合いの多い、毎年多数の東大合格者を出すような名門校出身に多い。
そしてヒエラルキーの最下層が、学力が高くなく、要領もよくない学生。僕のようなタイプです。
親や教師に半ば強制的に勉強をさせられ、身の丈に合わない東大に入っても、いいことはありません」