働きながらでも社会を変えたいという思いには、原体験がある NPO法人「Living in Peace」の創設者慎泰俊

日本の若きグローバル・シェーパーズたち 第1回
東京丸の内・MCフォレスト前に立つ慎泰俊氏

取材・執筆:上阪徹(ノンフィクション作家)

「本人の思いだけで努力ができるわけじゃない」

 世界中から知識人やジャーナリスト、トップ経営者や政治指導者が一同に会するダボス会議。主催者である世界経済フォーラムが、20歳から30歳前半の若手リーダーを世界で選出している。それが「グローバル・シェーパーズ」。日本の若きグローバル・シェーパーズたちは、どのような人物なのか、ご紹介する。第1回は、NPO法人「Living in Peace」の創設者・理事長の慎泰俊氏だ。

 そもそも世の中には、大変な力があります。何か問題があれば、自然に解決されたりする。しかし、それにはひとつ条件があって。きちんと情報が伝わっていることです。

 人がケガをしたときも同じで、ケガが治るのは、脳にちゃんと情報が行っているから。ところが、社会の根本的な課題には、知られていないことが実は多いんですね。傷になっていることが、世の中という優れた脳に認識されない。だから、治らない。

 例えば、私たちは国内の児童養護施設のお手伝いをしています。昔は孤児院と呼ばれていた場所ですが、今は親御さんがいないのではなくて、一緒に暮らせないことが理由です。多くは虐待。それで、子どもたちは親と離れて暮らしている。

 児童養護施設は全国に約600あり、子どもは約3万人います。ここで今、問題が起きているんです。高校に進学しても5人に1人は中退してしまう。日本では高校を中退してしまうとアルバイトすら見つからないこともあります。人生のリスクが高くなってしまう。

 では、なぜこんなことになるのか。人間にとって一番大事なことは、人とのつながりなんです。天災や洪水に見舞われても、家族やコミュニティの存在が乗り越える力をもたらしてくれる。ところが、人間関係の根本である親との関係が虐待で崩れてしまうと、人とつながることが極めて難しくなるんです。

 自分を唯一信じてくれる親に捨てられたと思っている子もいます。自分に生きる意味があるのか、と思っている子もいる。こんな状態では、何かに努力するなんてできない。そもそも努力って、ものすごく難しいことなんです。人間の努力できるという感情は、多くの場合、親からの愛情や信頼が育むんです。

 自己責任論はある程度正しいと思います。でも、気をつけなければいけないのは、努力できることは才能ではない、ということです。本人の思いだけで努力ができるわけではない。それを、幸せな環境に育った人はわかっていないんです。

 スタートラインがそもそも違うのに、自己責任なんてフェアじゃない。もちろん人生は不平等なものだけど、スタートラインをなるべく揃えようというのは、社会のそもそもの役割だと思うんです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら