2月26日にインターネット上に公開された米国非営利団体『Code.org(コード・ドット・オーグ)』による動画は、瞬く間に多くの人に視聴されました(公開後約1週間後の3月6日時点の視聴回数は合計約1000万回)。まだご覧になっていない方は、是非この機会にご覧ください。(有志の方による日本語訳あり)
動画の冒頭には、スティーブ・ジョブズ氏の生前のインタビューから「この国の誰もがコンピュータを学ぶべきだと思う。なぜなら、プログラミングをすることで『いかに考えるか』を教えられるからだ」というメッセージが掲載されています。
また、マーク・ザッカーバーグ氏(フェイスブック創業者)、ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト創業者)、ジャック・ドーシー氏(ツイッター&Square創業者)、トニー・シェイ氏(ザッポス創業者)、クリス・ボッシュ氏(人気プロバスケットボール選手)らが登場し、プログラミングがいかに彼らの人生を変えたかを振り返り、プログラミングは思うほど難しいものではないと語っています。また、プログラマーが今後、社会で不足することが分かっているにもかかわらず、いかにプログラミングが学校教育で教えられていないかをウェブサイトでは指摘しています。
その上で、教育関係者には、簡単な動画のダウンロードを可能にして教室などで生徒に紹介することを推奨しています。また、学校教育へ導入するための署名を募り、このミッションに共感する人が寄付することもすべてウェブ上で可能になっています。プログラミングを学びたい人には厳選されたオンライン・プログラミング教育サイト(Scratch, Codecademy, Khan Academy, CodeHS)へのリンクが用意されている、一大キャンペーンとなっています。
賛同者としては、起業家、投資家、政治家、大学学長を含む教育関係者、俳優などが、プログラミング教育の大切さについてのメッセージや顔写真と共に、83人も名を連ねています。同サイトから賛同者の一部をご紹介します。
もちろん、ベンチャー企業を経営する上で、優秀なエンジニアを採用することは経営上の至上命題です。自社を成長させるためにこのキャンペーンに賛同するということも、ない訳ではないでしょう。
ただ、著名な賛同者たちのコメントを見ていると、「目先の利益を超えて、広く豊かな社会のために」「国家の経済成長、そして1人の人間としての成長のために」といった視点から、プログラミング教育の大切さ・必要性に共感している様子が伝わってきます。
私は前回の記事(『政治・行政分野において海外で急速に進むテクノロジー&オープンデータ活用』)で、今アメリカで盛り上がりつつある「市民的な分野でのテクノロジー活用"業界"(civic technology space)」での大きなイノベーションに触れ、ウェブサービスやアプリ開発をする公共的なマインドを持った「ウェブ技術者の育成・協業」と、一般市民や公共セクターに従事する方の「ソーシャルメディアリテラシー教育」が大切であると述べました。
今回の「Code.org」の動画を見て、個人的なフラストレーションを改めて強く思い出したので、ここに共有させて頂きます。
私は今まで、海外における先端的なサービスとして、公共的な分野でテクノロジー・ソーシャルメディアが活用された事例を3年近く紹介してきました。その中には、地方行政にイノベーションをもたらす「コード・フォー・アメリカ(Code for America) 」、災害時の情報集約を可能にする「ウシャヒディ(Ushahidi)」、子供たちにプログラミング教育を通じて問題解決力を身につけさせる「アップス・フォー・グッド(Apps for Good)」などがありました。
記事が掲載されると、ツイッターやフェイスブックで「日本にもこうしたサービスやプログラムがあったらいいですね」というコメントを頂くことが今までに何度もありました。一方で、自分としても「いつかこうしたサービスが日本でも生まれないだろうか」と他力本願的に願いながら記事を書いてきたことが多いのも事実です。
「Code.org」の紹介動画に登場する起業家たちは、「面白いサービスになる」と思ったアイディアや想いを実際にサービスやプロダクトとして創り上げ、それが何百万、何千万、何億人という人に活用され、実際に社会を変革することに成功しています。
私も、自分がゲイツ氏やザッカーバーグ氏のようになれるとは到底思わないものの、少なくともプログラミングに対する理解を今よりも深め、そうした仲間を多く持つことによって、アイディアや想いを実現することに少しでも近づくのではないか。今回、そんなことを改めて意識するようになりました。
また、先日目にした記事『政治を楽しいものに変える「イノベーション」 ネットやスマホアプリで政治の既成概念に挑戦する学生たち』 (JBPress 3/5, 鎌田 華乃子氏)を読むと、こうしたアイディアを具現化するための道具・手段(英語で「enabler」という表現を使うこともあります)としてのプログラミング・スキルの威力をますます強く感じました。
この記事の中では、アメリカでのハーバード大学ケネディスクールで学んでいた大学院生が政治参加をするために立ち上げた「Democracy.com」(立候補者が低額で自分のウェブサイトを設置できるウェブサイト)や、「Super PAC App」(ネガティブキャンペーンが多く行われる選挙広告の裏にある資金提供者、CM制作費、事実の裏付けなどを、CMから流れる音声を認識することで可視化するスマホアプリ)が紹介されています。
日本国内でも今年はますますスタートアップへの注目が集まり、またネット選挙、オープンガバメント、オンライン署名、クラウドファンディングなどが大きな話題となる中、自分の身の周りの「何かおかしい」ことの解決に取り組む手段として、「プログラミング」が有力な選択肢の一つになっていくと思います。
今回は、記事の終わりに願い・希望を伝えるのではなく、より具体的に、プログラミング学習・教育に関係する国内外の関連サービス・情報源などのまとめサイトを作成してご紹介したいと思います。プログラミング教育が拡がる一助になれば幸いです。
●『プログラミング学習・教育に役立つ関連サービス・記事・情報源(β版) 』(Naverまとめ)
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