ジョセフ・スティグリッツ「機会平等というアメリカの神話が崩れようとしている」

〔PHOTO〕gettyimages

最下層から抜け出せるのは58%だけ

 オバマ大統領は二期目の就任演説で、機会の平等というアメリカンドリームへの真剣な取り組みを再確認する高邁な言葉を使った。

「極貧の家に生まれた女の子であっても、アメリカ人である以上は、単に神の目からだけでなく、誰の目からも自由かつ平等であり、他の人間と同じように成功するチャンスがあるとわれわれは知っている、この信条を、私は守ります」。

 願望と現実のギャップは、このうえなく拡大している。今日、平等という点で米国は、他のいかなる先進工業国にも劣っている。相次ぐ研究結果により、米国は機会が平等に与えられている国だということが神話であると暴かれてきた。

 アメリカ人は結果の平等が望ましいかどうかに関しては意見が分かれても、機会の不平等は容認し難いという点では全員一致に近いコンセンサスがある。そういった意味において、これはきわめて悲劇的な事実であると言えるのだ。ピュー・リサーチ・センターの調査では、アメリカ人の約90%が、機会の平等を保証するためなら政府は出来ることをすべてやるべきだと指摘している。

 たぶん、100年前なら、米国は機会の国であると言うことができただろうし、少なくとも、ほかの国よりはチャンスに恵まれた国であっただろう。しかし、この四半世紀に関しては、そうは言えない。作家、ホレイショ・アルジャー流のボロ着から富へと出世した人たちの話は、意図的な作り話ではなかったはずだ。しかし、そういう話を聞かされ、われわれがすっかり満足してしまったことを考えると、もしかしたら意図的な作り話だったのかもしれない。

 これは社会的流動(モビリティー)が不可能だということではなく、社会階層を上げるアメリカ人が統計学的には特異な存在になりつつあるということだ。ブルッキングズ研究所の調査によれば、最下層5分の1の出身者のうち、その階層から抜け出せるのは58%のみで、同じ階層出身者で最上層に上がれるはわずか6%である。米国の経済(階層)的な流動性は、ヨーロッパの大部分の国より低く、北欧の全ての国より低い。

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