週現スペシャルこれぞ、究極の格差社会 使える理系使えない理系【PartIII】 理系の頂点「東大理Ⅲ」の人々の頭脳

週刊現代 プロフィール

 岸川氏のように、「そこに理Ⅲがあったから」受験した人がいる一方、はっきりと明確なビジョンを持って進学した人もいる。

 現在、東京大学医学部附属病院に研修医として勤める瀬尾拡史氏。医学部在学中に平成21年度東京大学総長大賞を受賞したトップ中のトップだ。

「はじめに医学部を目指したのは、日本において独学で学べないサイエンスは医学だと思ったからです」

 瀬尾氏にとって理Ⅲ、医学部への進学は思い描く夢への第一歩に過ぎない。その夢とは「科学的に正しく、楽しいサイエンス系コンピュータグラフィックス(CG)を生み出すこと」だ。

「幼稚園から公文式をやっていて、卒園の頃には中学レベルの数学はすべて終わった。小学3年の頃には高校で学ぶ三角関数ができるようになっていました。

 中学生のときNHKスペシャルの『驚異の小宇宙・人体Ⅲ』という番組を見て、CGはなんてすごいんだろう、いつかこの番組を超えるCGを作りたいと考えるようになったのです」

 筑波大学附属駒場中学・高校を経て東大理Ⅲへと進学。CGの技術を学ぶ時間を作るため、必修科目以外の単位は入学後半年間ですべて取得した。その後の1年間は大学と並行し、定評ある養成機関「デジタルハリウッド」に通った。

 2年生の秋に医学部に進学。最初についた指導教官が法医学の専門家だった。

「ちょうど裁判員裁判が始まる頃で、先生たちは一般の人にも分かりやすい裁判の証拠提示の方法を模索していた。私がCGをやっているという話をしたら、『それを使えないか』と興味を示してくれたんです」

 瀬尾氏は実際の司法解剖の所見や写真をもとに、遺体や傷口などのCGを作成し、最高検察庁に提供。'09年8月の第1回裁判員裁判では実際に法廷で使われた。この取り組みに先述の総長大賞が授与されたのだ。