週現スペシャルこれぞ、究極の格差社会 使える理系使えない理系【PartI】「理系は就職に有利」で選んだ人間の悲劇——文系と違い、ごまかしがききません

週刊現代 プロフィール

 米国の高校を卒業後は、カナダ・トロント大学で数学と経済学を専攻した。

「大学では確率過程(株価のように、時間とともに次にどう動くかの確率が変化するような現象)を学びましたが、数学の勉強だけでなくビジネスリーダーから話を聞く機会もよくありました。そうするうち、数学の研究を一生の仕事にするよりもビジネスの方が面白そうだ、と思った。

 では社会に出て、ビジネスプレイヤーとして認められるためには何が必要か。それは人を納得させて動かす力、対人影響力です。外資系コンサルティング会社などからのオファーもありましたが、対人影響力を養うのにもっともよい職場だと感じた、野村證券に就職したのです」

 現在の業務内容は、複数の銘柄の株式を束ねたポートフォリオを、いつ、どのくらい売買すればよいかを確率過程を利用して分析し、機関投資家に提案することなどだという。

 かつて人事部にも務めた同社広報部のベテラン社員はこう語る。

「野村では、とくに文系理系と社員を区別して採用しているわけでもなく、社員がどこの大学の何科出身かなんて、誰も気にしていません。社員のなかに、数学オリンピックのメダリストみたいな人がゴロゴロいるのも確かですけどね。

 あえて理系の特長を挙げるとすれば、数字に強く、ロジカルに物事を考えられるところでしょう。また目標を達成する最短ルートを見つける能力も高い。これは証券会社においては大きな強みです。それを活かして様々な部署で理系人材が頑張っていますね」

 東京大学地震研究所の纐纈一起教授は、自らの高校生時代を思い返しながら、こう語った。

「高校までの勉強で、一番手間と時間がかかるのが数学でしょう。そして、いわゆる理系の人たちは、基本的にその数学ができる。となると、他の教科だってできてしまう人が多い。

 私自身も日本史なんかは好きだったし、文系に進んだってよかったんですが、高度経済成長の時代には自動車産業や製造業が華やかで、理系のほうがすごい、偉いという雰囲気が社会全体にあった。それで理系に進みました。地震の研究に取り組むようになったのは、大学院に入る頃に東海地震説が発表されて大きな話題になったからです」

 ジャンルに左右されることなく、デキる人は徹底してデキる理系。だが、ある大手生命保険会社の人事担当者はこう嘆く。

「理系の能力は二極化していて、デキない人間はとことん使えないと私は思いますね。というのも、いま30代後半の、ある東大工学部卒業の社員を採用した経験があるから。