週現スペシャルこれぞ、究極の格差社会 使える理系使えない理系【PartI】「理系は就職に有利」で選んだ人間の悲劇——文系と違い、ごまかしがききません

週刊現代 プロフィール

「大賀典雄元社長も、新しい発想を大事にしていた。パソコン分野でのソニーのヒット商品はVAIOですが、大賀さんはとくには評価していなかった。既存のパソコンと同じもので特段、新しくなかったから。でも僕が『エアボード』を発展させて開発した、遠隔地から自宅のテレビが見られる『ロケーションフリー』は喜んでくれたね。

 ところが最近はソニーでも、お風呂ブザーのようなことを仕事の合間にやっていると上司から『お前、仕事はどうなってるんだ』と怒られる。それじゃ、いい開発者は育たないんですよ」

 自ら自由な発想でものづくりに取り組むことこそ、技術者のあるべき姿ということだろう。

 だが逆に言えば、ひとたび技術者として歩み出せば、学生でいる時間よりはるかに長い社会人人生の間、科学の専門知識を駆使して新しいものを作る作業に取り組まなければならない。そこに喜びを見出せて、はじめて理系の仕事を続けられるのだ。

「将来、仕事がありそう」などという曖昧な動機で無理に進学したのでは、いざ就職しても「使えない理系」として会社のお荷物となり、自らの自尊心も深く傷つく。

 やはり、理系としての人生を送る者は、「理系たる資質」を備えた者でなければならないらしい。次節以降、何が人を理系と文系に分けるのか、探求しよう。

PartII 理系の恐怖
——デキるヤツが徹底してデキるのが理系

 2月7日、楕円形の巨大な吹き抜けを持つ地上22階建ての大手町の高層ビルに、60人ほどの学生が集まった。野村證券の主宰した理系学生のための会社説明会。演台に立つのは、金融商品の開発や数理的な評価を行っている、現役の理系社員たちだ。

「デリバティブといえば確率1で収益が得られるような戦略を考えることですが・・・・・・」

「客観的な指標となるインデックス開発を・・・・・・」

 専門用語の洪水のような解説に、学生たちは神妙な顔つきで聞き入る。だが、会を運営する文系の人事部担当者は、

「金融工学が専門ではない学生も多いですが、そういう人は内容の詳細をすぐに理解するのは難しいでしょう。実際には、業務のなかで実地の勉強をしてもらうことになります。私たちも今の話の細かい部分は分かりません」

 と笑う。

 演台に立ったひとりで、今年30歳になるという株式のトレーダーの男性はこう語る。

「私は普通のサラリーマン家庭で育ちましたが、中学を卒業して高校にあがるときに、単身、米国に渡りました。数学が好きで、将来は研究者になりたいと考えていたのですが、日本の研究者の経歴を見ると、みな大学卒業後に海外の大学に進んでいる。それならば初めから海外で高等教育を受けるのが近道だろうと考えたのです」