NTTはどこへ行くのか
【第1章】 通信業界とは違う新世界へ(2)

ディメンション・データ社のホームページ

第1章(1)はこちらをご覧ください。

アジアの高福祉国家をめざす日本

 ディメンション・データの話に入る前に、なぜNTTグループは海外市場への展開を目指すのか---について、少し考えてみましょう。

 日本の大企業にとって、海外市場への展開は自然の流れかもしれません。私のように海外生活が長く、米国から見る立場にとって、日本の経済環境は決して優れたものではありません。厳しい規制と高い法人税、上昇を続ける人件費や設備・エネルギーコストは「今後も日本経済の足を引っ張り続ける」でしょう。

 2010年8月、アメリカの総合雑誌ニューズウィークで「世界成長力&幸福度ランキング」という特集記事がありました。大変話題になったので、ご存じの方も多いと思います。私も日本に出張する飛行機の中で興味深く読みましたが、日本の幸福度は「人口の多い国で第1位。総合でも9位」にランクされています。

 順位もさることながら、その記事全体から浮かび上がってくる日本の姿に私は注目しました。「欧州におけるスエーデンのように、日本はアジアにおける高福祉国家へと向かっている。経済成長よりも、安心して暮らせる国作りを目指している」と分析しているのです。これは、アメリカから日本を見たときの素直な姿かもしれません。

 アジアにおける主役は、もはや日本ではなく中国であることは、米国人にとって当たり前のことです。身の回りを見渡せば、「ジャパン」と言われて、ソニーやトヨタなどを思い浮かべる人は減り、「ソニーは韓国メーカーだ」と言い張る若い世代が増えています。日本政府が、成長戦略をいくら口にしても、海外の眼は厳しく、なかなかだませるものではありません。

 もちろん、福祉を充実させて住みやすい国をつくることは、日本国民にとってまんざら悪い話ではありません。しかし、企業にとっては、耳にしたくない話です。低成長が続く日本に依存すれば、企業は成長を続けることができないからです。

 NTTグループにも、この話は当てはまります。同社が日本で伝統的な通信ビジネスだけを追い求めれば、成長を続けることは難しいでしょう。では、電力やガスなどと同じ公共ビジネスとして低成長に甘んじるべきなのでしょうか。あるいは、事業の多角化や新規事業・新市場の開拓による成長戦略を描くべきなのでしょうか。

 この課題に対して、NTTグループは後者を選んだ---と私は思っています。幸い、通信サービスは国際市場の開放が進んでおり、欧州でも米国でも、あるいはアジア諸国でも、成長市場でビジネスを展開することができます。

 また、NTTは現在でこそ株式会社ですが、元々、政府機関として成長してきたこともあり、NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)という法律に縛られた特殊な会社です。その意味では、一般企業にも増して厳しい国内規制があります。そうした規制の枠を超える意味でも、海外市場への飛躍は魅力的な選択肢と言えます。この規制問題については、また後ほど詳しく触れることにしたいと思います。

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