田原 いま大変な不況なんですが、楽天は去年の売上利益は前年に比べてどうでしたか?
三木谷 おおむね20%増です。
田原 20%増!? 利益も? 売り上げも?
三木谷 はい。
田原 すごいじゃないですか。
三木谷 もっといけたんですけどね。ネットサービス事業分野だと、売上で30%増、営業利益で40%増です。
田原 ほとんどの会社は減益ですよね? その中でそんなに増益というのは、どこが違うんでしょうね? ネットビジネスと普通のビジネスは。
三木谷 ひとつは、やっぱりお客さんに対して天動説か地動説かという話でいえば、今までのビジネスというのは天動説です。
田原 そうか、客が来いっていうわけね。
三木谷 今までのビジネスは、要するに自分の施設がある、それをどうするか、持っているものをどうするかということだと思うんです。
けれども、インターネットビジネスというのは、巨大なサーバーこそ持ってますが、いろいろ転用の利くものですし、世の中の流れ、技術の流れ、消費の流れというものを見ながら、サービスをものすごく細かくアジャストしていってるんですよね。
われわれのインターネットショピングモール「楽天市場」では、新しい機能が毎日のように次々にリリースされていくわけですよね。そのスピード感と顧客のニーズに対する適応力というのが、そもそも違うんですよね、構造的に。リアルビジネスとネットビジネスというのは。
田原 なるほど。お客さんのニーズにどんどん応えられる、変われるわけだ。
三木谷 そうです。そこが一番違う。
田原 よくね、三木谷さんはグループ流通総額が1兆円になったら辞めるとおっしゃってた。
三木谷 そうですね。
田原 今どれくらい?
三木谷 グループで、カードなど全部入れるとおよそ2兆円です(笑)。
田原 とっくに超えちゃったわけだ。
三木谷 今年は「楽天市場」だけで1兆円行くか行かないかです。
田原 ついに1兆円超えちゃった。
三木谷 「楽天市場」と「楽天トラベル」の流通総額の合算でいうと、もう1兆2千億円くらい行ってるんです。
田原 すごいなあ。今楽天は世界では何位ですか?
三木谷 数え方によるんですけど、時価総額で言うと9番目です。
田原 日本では一番でしょう?
三木谷 いえいえ、ヤフー・ジャパンです。
田原 ヤフーと楽天はどこが違うんですか?
三木谷 楽天はeコマースを中核にしてトラベルや金融ビジネスなどを加えて、ユーザーに対してワンストップでサービスを提供するという楽天経済圏というのが基本スタンスです。ヤフーというのはどちらかというとメディア的な色彩が強いんです。メディアを中心にしている。総合商業施設とテレビ局の差かな、と思うんですけど。
田原 そうか、楽天はテレビ局のようなサービスはないわけですね。
三木谷 一応あるんですけど、割合が低いんです。弱いと言ってもいいですね、正直言って。
田原 国際戦略は当然持ってらっしゃる?
三木谷 はい。
田原 どういうふうに?
三木谷 当社の基幹事業であるEC事業では、すでに台湾、タイにおいてサービスを開始しています。アメリカでは、ネットの広告会社を傘下におさめています。今年中にEC事業で累計10カ国に進出する計画です。
田原 なんで中国は入ってないんですか?
三木谷 もちろん入っています。すでに今年の1月に百度という中国最大のサーチエンジンの会社との合弁設立を発表しました。中国では百度はグーグルより全然上なんです。
田原 提携ですか?
三木谷 ジョイントベンチャーです。51%が楽天で49%が百度。
田原 51%が楽天? それを中国で。
三木谷 そうです。うちの場合は、お客さんが来る店舗がある。たくさんお客さんが来て、売れるから店が集まる、店が集まるからお客さんが来て売れる。そのサイクルにどうやって入るかが課題なわけですよ。今回は、相手側は検索NO.1の会社だから、巨大なトラフィックを持ってる、巨大なメディアを持ってる会社ですから、そこからお客さんが来てくれる。
田原 なるほど。