週現スペシャル いまや一流企業の採用基準は「学歴より地頭」が重視されるというけど「地頭がいいヤツ」の研究
第1部 ガリ勉して頭がいい人はダメ

週刊現代 プロフィール

 ここで言う反射は肉体の脊髄反射ではなく、もう少し広い意味だという。

「たとえば人間の感情というものは、決定的に反射なわけです。他人に何かをされてムッとした、この感情はもうどうにも変えようがない。面白い実験があって、イタリアの小都市で米軍基地拡張の賛否を問う住民投票が行われる1週間前、事前に調査をした。そこで『まだ決めてない』という住民がどちらに投票するか、1週間前の時点でほとんど確実にわかる、という実験結果が出たのです。

 方法は、その人の『反射の傾向』を調べること。決断する本人より先に、実験を行う研究者に、将来の行動がわかるのです。言葉を変えると、本人は無自覚だけど、無意識の世界ではすでに賛否を決定している、と言えます。

 重要なのは、日常生活における反射は、生まれながらのものではなく後天的な要因がかなり大きい、ということです。つまり、その人が過去にどういう経験をしてきたかで、反射の仕方が決まる。これを我々は、勘所とか、直感とか呼んでいるわけです」

 たとえば将棋の棋士も、序盤戦、終盤戦は理詰めだが、中盤戦は「直感」で打つと言われる。最初に答えが閃いて、制限時間内にその手を検証するが、結局は検証しきれずそのまま打つ、ということが羽生(善治)九段レベルでもある。

「羽生さんは『最初に思いつく手が意外といいんだよね』とおっしゃってましたが、脳科学的にはそれこそが『優れた反射』です。もちろん素人が盤面を見ても何も思い浮かばない、つまり反射が生じない。反射力は訓練によって成長していくものなのです。

 器質的に言うと、反射は大脳皮質ではなく、脳の内側の『線条体』が司っています。線条体は歳をとればとるほど大きくなる。逆に線条体がダメになると、パーキンソン病になります。あの病気の本質は肉体疾患ではなく、身体の適切な動かし方を脳が忘れる『記憶喪失』なんです」

いま評価されるのはこんな人

 本当の頭の良さ=反射力。この公式が正しいことは、社会に当てはめることでよくわかる。

「仕事で苦境に立たされたときに新しいアイデアで上手く切り抜けるとか、人と話しているときに気の利いた発言ができるとか、すべて反射の力です。そしてその力は訓練で鍛えることができる。

 でも、ここでIQの話に戻れば、線条体が素晴らしくて大脳皮質がダメ、という話ではない。言語性IQと非言語性IQのバランスが重要。たとえば頭の中で素晴らしいメロディが鳴っていると主張しても、歌ってみたら音痴だったら、ただのホラ吹きになってしまう。つまり、技巧やプレゼンテーション能力も、やはり大切なんです」

 ガリ勉で高学歴を手に入れた人間は、言ってみれば「技巧だけあって中身のない人間」ということ。そんな人が仕事の重要な場面で活躍できないのは、もっともだと言える。