岩崎元郎 第2回 「数度の雪崩の危機をかいくぐった岩崎先生はやっぱり幸運の人です」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ 野口はいいやつだよ。この間もここに遊びにきてしたたかシングルモルトを飲んで葉巻を吸っていった。野口のお父さんは外交官だから、子供のときから葉巻の香りを嗅いで育ったんだと言っていましたね。

岩崎 そうでしたか。

シマジ 久しぶりに会ったんですが、相変わらず礼儀正しい男でした。

岩崎 そうですね。野口は体育会系の男ですからね。

シマジ 岩崎先生はいつごろから山に興味を持ったんですか?

岩崎 高校2年生でしたね。中高一貫の学校だったんですが、中学校のときは背が伸びるかもしれないと思いバスケット部に入りました。でもちっとも伸びない。それで今度は剣道部に入り直しました。ところが背が小さいからメンを打たれっぱなしなんです。それも後頭部をこれでもかと打たれるんですね。

 さすがに音を上げて、次は卓球部に入ったんですが、ネットのすぐそばに球が落ちると手が届かないので、これも嫌になってやめました。それからボーイスカウトに入り山梨の三つ峠で山登りのまねごとをやった帰り道、大人が履いていたキャラバンシューズに目が留まりました。そのとき「あれ、格好いいなあ」とときめいたのが山への誘いでした。

 昭和31年には日本人がマナスル登頂に成功して世の中が登山に湧いていました。仲間は何人も山で死にましたが、わたしは運良くこうしてまだ生きて山を登っているんです。

シマジ それは先生の強運でしょう。運はご先祖さまからいただいたお宝なのです。

岩崎 でも運がいいなんて自慢していると、そのうち運が尽きてしまわないか心配ですね。

シマジ 大丈夫でしょう。岩崎先生はいい顔をしていらっしゃいます。これは運がいいお顔ですよ。人生は煎じ詰めれば運と縁ですね。

岩崎 なるほど。シマジさんにこうしてお会い出来たのも運と縁ですもんね。

シマジ ひとつ重要なことをお訊きしたい。運とは関係ないのですが、山を登っているときウンコをしたくなったらどうするんですか?

岩崎 それは一口には語れない難しい問題ですね。