岩崎元郎 第2回 「数度の雪崩の危機をかいくぐった岩崎先生はやっぱり幸運の人です」

島地 勝彦 プロフィール

岩崎 いいえ、そんなことはありません。わたしは中途採用でしかも高卒の資格で入ったんです。狭山工場の部品管理の仕事でして、1時間も働くともうわたしの分担はやることがなくなってしまうんです。残りの時間は山の原稿を書いていましたね。ですからまっとうな仕事をした経験も多少はあるんですよ。でもそのころから山のことしか頭になかったです。

シマジ まさに山に魅せられた男ですね。

岩崎 いやいや。田部井純子さんや市毛良枝さんも仰っていますが、登山は運動オンチに向いているようです。わたしもその一人です。山登りはただ足を前に出していればいいわけですから。

 わたしの場合は趣味登山家なんです。谷口ケイちゃんとか野口健はいわゆる冒険登山家で、ちゃんと棲み分けしているんです。谷口ケイちゃんは世界最高のクライマーです。まさにアスリートですね。だからわたしは同じ趣味登山者たちを相手に山は危険だからちゃんと登ろうねということを教えているんです。

シマジ 野口健もはじめは岩崎先生に手ほどきを受けたんですよね。

岩崎 そうです。彼がロンドンの立教英国学院高等部の1年生のとき、寄宿舎の先輩の部屋に転がっていた「ヤマケイ」の雑誌をみてわたしを知ったらしく、いきなり電話がかかってきたんです。富士山で雪上訓練をしてくれというんで、12月に野口を連れて富士山に登ったんです。そこで「滑落停止」というんですが、身体を反転しながらピッケルのピックを雪面に打ち込む技術を教えました。

 そして翌年の夏、モンブランに登らないか、と野口を誘いました。彼はロンドンからやってきてグリーンデルで待ち合わせたんです。それで彼は初めてモンブランに登頂したんです。

シマジ それから野口健は7大陸の最高峰を目指すんですね。

岩崎 そうです。若くしてエベレストを登って一躍有名になりましたね。

シマジ そうだ。セオ、いつか野口健と対談しようか。

セオ いいですね。シマジさんが『落ちこぼれてエベレスト』を作ったんですから、OKしてくれるでしょう。

立木 むかし野口の写真を撮ったとき、「女には気をつけろ」っていってやったことを思い出した。

セオ たしかに野口健さんはイケメンですものね。