電撃移籍のWBCキーマン糸井嘉男の超人伝説「俺はケガにも気づかない(笑)」

フライデー

 寮の糸井の部屋の天井と壁一面には、プラネタリウムのように星が光る黒い布がビッシリ貼られていた。まさに宇宙空間。榎本監督は、「僕らの世界の人間とは違う」と感じたという。こんな部屋じゃあ、そりゃ二度寝、三度寝もするって!

 遡って、中・高の同級生が語る話には糸井らしさが凝縮されている。

「中3のとき、大事な試合へ向かう前の学校での練習中、座り込んでいた糸井に監督が、『帰れ!』と怒ったんです。すると、糸井は本当に帰っちゃったんですよ。彼の家は学校の真ん前。大会に行く僕たちが乗るバスに向かって、2階の自分の部屋から『頑張れよ~』と手を振っていました」

 帰れと言われたから帰る。糸井にとっては正しすぎる行動なのだ。 

 全球団が糸井に注目した大学時代、投手として153km/hを投げ、バットを振ればヘッドスピードはプロ顔負けの160km/h。榎本監督曰く、「いま大谷翔平君が挑戦している二刀流の夢を抱かせる選手」だったという。クラウチングスタートもせずに走って100m10秒5。練習の一環で鬼ごっこをして糸井が鬼になると、当然誰もが逃げることをやめたという。ちなみに、監督が糸井に出すバントのサインは、そのままバントのポーズ。相手にバレようが、まずは糸井に理解させることが最優先。第一、バントしても必ずその快足でセーフになってしまうのだ。それを見たチームメイトから「糸井さんはバケモノ」と言われると、糸井はこう返したとか。

「俺がバケモンやったら、お前らは天才や。こんだけ野球がウマいんやから。俺、野球ヘタやもん」

 きっと糸井は自分の能力に気づいていない。なぜなら彼は超人だから---。

「フライデー」2013年2月15日号より