パワーハラスメントが生じる原因は明白だ。日本代表を決定する方法が明確ではないからである。 五輪をはじめとする国際大会の代表は、どのようにして決められるのか?
まず選考対象の大会が設定され、そこでの成績が重視される。だが、その大会で優勝したからといって自動的に代表になれるわけではない。ここに過去の実績が加味され、また世界レベルに通用する選手であるか否かという判断が全柔連によってなされることになっている。
たとえば2007年の世界選手権代表選考会となった同年4月の「全日本選抜体重別選手権」。この大会の女子48キロ級で福見友子は決勝で谷亮子を破り、優勝した。しかし48キロ級の代表に選ばれたのは谷だった。理由は「実績重視」。この選考会の意味は、どこにあったのか?
代表選考には全柔連役員の意向が大きく働く。ならば、彼らから理不尽なことをされても、代表の座を得るためには従うしかないという状況が生じる。つまり、代表選考の曖昧さがパワーハラスメントの温床なのだ。
これは改めなければいけない。選考会で成績を残したものが代表になるという明確な形にする必要があるだろう。すでにレスリングでは五輪の代表選考において、そのシステムが用いられている。柔道も選考会で勝った者を代表にするというシンプルなルールをつくれば、選手たちのモヤモヤ感は解消されるのである。
そもそも大会の出場権は全柔連が与えるべきものではなく、選手が掴むべきものなのだ。真っ先に、この部分の改善をすべきだろう。簡単なことなのだから、全柔連は選手たちへの影響力を維持しようとはせずに、すぐに改革へ着手してもらいたい。
最後にひとつ。今回の騒動で、どうしても納得のいかないことがある。それはJOCに対して告発をした15人の選手の顔が見えないこと。彼女たちは表に出てきて自らの言葉で語るべきである。返り血を浴びる覚悟なく、自らは安全な場所に身を潜めて匿名で誰かを告発するというやり方は真っ当ではない。