精神科医が説く「子育ての『常識』のウソ」

『反教育論──猿の思考から超猿の思考へ』著者・泉谷閑示インタビュー

──「大人の反抗期」に陥る人たちは、親と仲が良い場合が多いんですか?

泉谷 たしかにうつになるまでは、端から見ると、仲が良すぎるくらいに見える場合が多いですね。ただしセラピーを受けると、自分が親の価値観に洗脳にされてきたんだと気が付いて、段々と反旗をひるがえすようになる。それは、力強い精神的独立で、じつに見事なものです。

 だから私がクリニックで行う作業は、ある意味「脱‐洗脳」なんです。

──そうすると、先生はクライアントの親御さんに恨まれることも多いのでは?

泉谷 確かに、そういう残念なことも時には起こります。自分の価値観から離脱していくことに危機感を強めた親御さんやパートナーなどから、「あんなところには行くな」とか「泉谷先生は危険思想だ」とか言われちゃうこともあるようですから。でも、もうそのころには自分で考え、正しく判断できる力が本人の中に力強く育っていますから、そういう周囲の言動に惑わされることなく、このプロセスを着実にやり遂げ、元気になっていきます。

本当に「子供のため」?

──先ほど「去勢」された人は年代で分けられるとおっしゃっていましたが、それはどんなことが要因だとお考えですか?

泉谷 ひとつには、いまの30代までの世代は、もはや社会全体が右肩上がりの時代を過ぎて、ヴァイタリティあふれる「お祭りの時代」を良くも悪くも経験していない。思春期のころから、ずっと社会が閉塞感に満ちていたのですから、個人個人もなんだか元気が出ないんです。

 また、近年、教育やしつけにおいて、子供たちがよりシステマティックに管理される傾向が強まってきたことも、大きい要因ではないかと思っています。

 私は1962年生まれですが、もちろん私の親世代の価値観にも、子供にはきちんと教育を受けさせ、いい大学に入れて、というのは今と同じようにあったと思います。

 しかし、実際の教育現場でもプライベートでも、まだまだ隙間の部分は多かったし、ギッチリ管理されるということもなかった。そもそも私は田舎育ちなので、塾もそろばん塾ぐらいしかなかったですし、ワンパクに騒いだり、サボったりということを、みんな当たり前にしていた。そして、何をするでもない「暇な時間」がたくさんあった。

 それがいまでは習い事にしても、塾にしても大学でさえ、手取り足取り面倒を見てくれるようになっている。それは親切と言えば親切なんでしょうけれど、時間的にも空間的にも、そして人間関係においても、どんどん隙間や遊びがなくなっていますね。