精神科医が説く「子育ての『常識』のウソ」

『反教育論──猿の思考から超猿の思考へ』著者・泉谷閑示インタビュー

──つまり、彼らが受けてきたしつけや教育が原因であると。

泉谷 ええ。精神分析的な言葉で言えば、しつけや教育によって「去勢」されてしまった。それでもなんとか適応して生きてきたけれど、あるところでもう動けなくなってしまった。そこで私のところにやってくる。

 だから私は、「もう去勢するようなことはやめてください」ということが言いたかった。それが今回の本を書こうと思った大きな動機です。

新型うつ病は「遅れてやってきた反抗期」

──そうした去勢されてきた人に世代的な特徴はありますか?

泉谷 私が接するクライアントでいうと、10代から30代がほとんどです。40代以上は、まだある種のエネルギーがあって、あまりそうした印象を受けない。

──本書の中では、「新型うつ病」という最近のはやりの言葉との関連も触れられていますよね。

泉谷 これは今回の本を書きながら私も気付いたことですが、それは「『新型うつ病』とは『遅れてやってきた反抗期』なのではないか」ということです。

 そんなことを言っているのは、いまのところ私だけだと思いますが、実際にそう考えてみると、彼らの症状がなぜ生じたのかがよくわかってくるし、実際にセラピーもすごくうまくいくんですね。

──通常あるはずの思春期の「反抗期」を経験してこなかったと?

泉谷 そうですね。実際にうつにかかっているクライアントに、思春期に反抗期があったかどうかを訊くと、まず反抗期がなかったと言う人が多いし、あったとしても不完全燃焼の場合が多いんです。

 そうした方々は、成長して大人になっても、親の価値観とか、引力圏内にずっととどまっている。それは、たとえひとり暮らしをしても、結婚しても、子供をもうけても変わらない。

 本来は、ある程度大人になると、親の引力圏を脱して自力で自分の世界を構築していくものなのですが、その作業ができていない。

 そのため、ある日突然エネルギーが切れたようになって、会社や学校に行けなくなる。しかし、本人自身も、医者も含めた周りの人間も、ただ「具合が悪くなった」という認識しか持てないんです。

 でも、それは本当は反抗期なんです。だから「早く復帰できるようにがんばりましょう」と言って元に戻すための対症療法を考えても、本当の解決にはならないし、再発を免れない。そこで必要なのは、なぜ具合が悪くなったのか、そんなことになったのか、その「意味」についてよく読み解いていくことなんです。