長谷川幸洋著 『政府はこうして国民を騙す』
~政府は平気で嘘をつく~

1月18日発売の最新刊より第2章導入部を抜粋

「最小化」と「極小化」の違い

 政府は厳密に国民負担の話をしたり文書に残すときは、注意深く「最小化」ではなく「極小化」という。それは、政府の案では最小化にはならない事情がよくわかっているからだ。極小化であれば、ある一定条件(この場合は株主と銀行の責任免除)の下で部分的に小さくなる点(極小値)を目指せばいい。これに対して、最小化は文字通りの最小化である。つまり極小化は、けっして最小化と同じではない。

 ほとんどのメディアはおおざっぱに考えて、最小化も極小化も区別しない。そのことが官僚や官僚のブリーフィングを受けた大臣にはわかっているので、たとえば枝野幸男経産相は機構が1兆円を出資した2012年7月になっても、まだ平気で「これ(出資)は賠償、廃止措置、電力の安定供給という三つの課題を国民負担最小化する中でしっかりと実現するためのものであります」と自慢げに語っている(7月31日の記者会見)。

 これはメディアが馬鹿にされているという話である。経産省は「どうせ最小化も極小化も違いがわからないだろう」とたかをくくっているのだ。

 電気料金値上げは結局、決まってしまった。では、東電に投入された公的資金は本当に一時的な肩代わりで、最終的にはきちんと国民に返済されるのだろうか。それをたしかめるには東電の経営実態をみればいい。

 政府の支援を受ける前提として、東電は原子力損害賠償支援機構法に基づいて2012年4月27日に「総合特別事業計画」を作成した。それによれば、東電の純資産は2012年3月期の5,774億円から2013年3月期には1兆3,760億円に増加する見通しだ。ほぼ1兆円の出資に見合っている。

 当期利益は2013年3月期に2,014億円の損失を出すのを底に、2014年3月期は1,067億円の黒字転換をはたす。それ以降、2022年3月期まで毎年1,000億円前後の利益を出すシナリオを描いた。2010年代半ばに「積極的な国際展開や小売り部門における新ビジネスの展開等による収益の拡大」を通じて社債市場への復帰をめざしている。

*) 2011年8月10日に成立した。第1条で「原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施」と「電機の安定供給」「原子炉の運転に係る事業の円滑な運営の確保」を図り「もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に資する」ことを目的と定めている。「国民負担の最小化」は初めから目的になっていない。
 政府が損害賠償支払いのために機構に交付国債を交付し、機構がそれを現金化、東京電力に資金を交付する。東電は後で機構に毎年、特別負担金を支払って返済する。交付国債だけでは資金不足の場合や後に東電の返済負担が過大になった場合には、交付国債とは別に国が機構に資金(現金)を交付することもできる。ただし機構は交付国債を現金化した分については国に返済するが、現金で受取った分については国への返済義務はない。
 このほか、機構は国の政府保証を得て民間の金融機関から資金を借り入れ、東電に出資や融資もできる。機構は2012年7月31日、東電に1兆円を出資し事実上、国有化したが、その際の資金は政府保証付きで民間金融機関から5,000億円ずつ2回に分けて資金を借り入れた。