確かに160kmという球速は、大きな魅力に違いない。ただ彼の才能は、それだけにとどまらないから面白い。プロのレベルを熟知するOBだからこそ驚いた、「打者・大谷翔平」の、真の実力とは。
「非常に柔らかいスイングで、低めの変化球への対応とか見切るのがうまいですし、すごくセンスのあるバッティングをすると思います」
「打者・大谷翔平(日本ハム・花巻東)」の印象を問うた本誌の取材に対し、鳴尾浜球場で自主トレに励む阪神のドラフト1位ルーキー藤浪晋太郎(大阪桐蔭)は、よどみない口調でそう答えた。
甲子園での大谷は、同学年の藤浪にとって、紛れもなく「驚異的な高校生スラッガー」だった。大阪桐蔭が優勝した昨年春のセンバツ。その1回戦で、藤浪は大谷からホームランを打たれている。
「ボールがバットに乗ったような長いインパクトと、打った瞬間にホームランだとわかる美しい角度の打球。高校生のあんな打球、初めて見ました」
一直線にライトスタンドに飛び込む一発。日本ハムの大渕隆スカウトディレクターは、ひと目で大谷の打撃に惚れ込んでしまったという。
打者か、投手か—。
最高球速160kmをマークする高校生最速の豪腕と、高校通算56本塁打を誇る打棒。天から特上の二物を与えられた大谷は現在、日本ハムの鎌ケ谷球場で、「二刀流」の実現に向け、新人合同自主トレに励んでいる。
「一日中、野球ができる幸せを感じています」
と語る大谷は、
「投手としても、打者としても一番を目指したい」
と、二刀流の成功に強い意欲をみせている。
だが、生の大谷を見たプロ野球OBたちのコメントの多くは、投手よりも打者としての魅力について語られるものだった。
かつての広島、ヤクルトの主砲・小早川毅彦氏(現野球解説者)も、その一人だ。
「投手としては10年に一人だが、打者としては20年に一人、そういう意味では50年に一人の選手と言えるんじゃないですか」
小早川氏だけに限らない。オリックスの前監督・岡田彰布氏も、