2013.01.29
# 雑誌

あなたの「がん保険」は本当に必要か? 驚くほど充実している公的医療保険制度
『がん保険のカラクリ』【第1回】 文/岩瀬大輔

 もっとも、この差額ベッド代の実態について筆者が地方病院に勤務する知り合いのソーシャルワーカーにメールで尋ねてみたところ、次のような回答があった。

「必ずしも必要ないにもかかわらず、患者側が支払っているケースは多々あるかと思われます。よくあるケースとして、

・入院が必要と判断されながらも、個室しか空いていない場合
・感染者で隔離が必要な場合
・認知症等で他の患者さんの迷惑となってしまう場合

 これらの場合、原則払わなくてかまいませんが、病院側の個室料負担のお願いに対して、患者・家族が『仕方ない』という感じで応じているようです。それ以前に、患者や家族が支払う必要がないことを知らないといった背景があります。病院側も個室料金は極力取りたい意向があるため、可能な限り個室に入る必要を説明して負担してもらっているようです。おかしな話です。実際には、民間の保険に入っているから、室料差額を負担できるという患者さんも多いです」

 療養中の患者としては、お世話になっている医師や看護師から個室を勧められて、明確に異義を唱えるのは恐らく簡単なことではないのだろう。

 なお、先進医療については後に詳しく述べるが、個室代も未承認薬もいずれも患者の任意選択であり、望まなかった場合は発生しない費用である。したがって、わが国の医療制度の建前としては、標準的な医療を選択している限りにおいては、健康保険の給付対象となることは覚えておきたい。

民間医療保険は不要? とても手厚い「高額療養費制度」

 さて、自己負担割合は原則として3割と述べたが、重い病気などで長期入院を余儀なくされたり、在宅療養でも治療が長引く場合には、自己負担の金額が高額となりうる。このようなケースにおいて家計の負担を軽減すべく、一定の限度額を超えた金額について患者に払い戻す仕組みが「高額療養費制度」である。

 この制度によって、平均的所得の世帯であれば1カ月当たり約9万円が自己負担の上限となる(70歳以上は毎月4万4‌4‌0‌0円)。例えば、大きな手術で治療費が1‌0‌0万円かかったとしても、患者の自己負担額は3割の30万円ではなく8万7‌4‌3‌0円となる。治療が複数回にわたって継続する場合には、4回目からは月4万4‌4‌0‌0円に軽減されるという措置がある【図表7】。

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