長谷川幸洋「データジャーナリズムという新潮流に日本のメディアは対応できるのか」

生データから新事実を分析できる能力

〔PHOTO〕gettyimages

 政府が情報公開を進めて、私のような記者の目の前に山のような生データの情報が与えられたとしよう。私はそれらを適切に整理、分析して読者に情報の意味合いを正しく伝えられるだろうか。率直に言って、あまり自信がない。

 なぜか。私には生データを分析する基本的スキルが欠けているからだ。

 たとえば、私はエクセルを十分に使いこなせない。せっかく生数字の情報セットがあったとしても、それらをきれいに統計処理できないし、まして複雑な回帰分析などできない。せいぜい平均値を出すか、簡単なグラフを描くのが精一杯だ。

 正直に言えば「数字セットの意味合いを確かめるためには回帰分析が必要だ」と痛感して、統計学の教科書を買ってきて読んだり、エクセルの簡単な作業にチャレンジしたことはある。初めてきれいなグラフや散布図が描けたときは単純に喜んだものだ。

 だが、それも途中で止めてしまった。記者稼業は35年を超えたが、ほとんどの記事を書くのに、そんな統計処理は必要不可欠ではなかったのだ。記事を書くには、別の角度から問題にアプローチする方法もあった。

 しかし、これからそうはいかなくなるかもしれない。政府が情報公開を進めて生数字の公表を始めたら、ちょっと統計処理してみれば、新たな発見があるかもしれないのに、そういう分析作業をしないで済むか。

 もしかしたら、回帰分析をして数字セットの相関関係をあきらかにできれば、自分の主張を数字で裏打ちするのが可能になるかもしれない。つまり記事に、より付加価値を高められるかもしれないのに、それをしないのは良く言って「詰めが不十分」、悪く言ったら「手抜き」という話になるかもしれないのだ。

 これは、私にとって困った事態である。書きながら、我ながらそう思う。さて、どうしたらいいのか。政府に「もう生数字のような情報は出すな」と言うのか(笑)。まさか、ジャーナリストの身でそんなわけにはいくまい。・・・(以下略)

メルマガ「現代ビジネスブレイブ」より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら