浜田宏一「人口構成がデフレの要因だという日銀の愚かな責任逃れ」

『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第3回

 期待が効くとはいっても、それが信憑性のあるものでなければ有効ではない。七月、八月になって、マネー・サプライにやや増加傾向が見られたほかは、信憑性を裏打ちするものはほとんどなかった。

 すなわち、バレンタインにチョコレートをあげますという国民への宣言は、「将来新たな資産買い入れを一〇兆円積みます」ということではあっても、「いつ、どれだけの資産を買います」とはコミットしていないのである。目的であったはずのデフレがまったく解消せず、円も一ドル七〇円台の後半に戻ってしまったのが何よりの証拠だ。

 ちなみに「バレンタインデー緩和」から数ヵ月経ったとき、私は安倍プロジェクトの聞き取り調査の一環で、東大退官目前の三輪芳朗教授にインタビューした。氏は引っ越し準備中に時間を割いてくれて、金融に関するマスコミの無理解を憂う私と大いに意気投合した。

 すると、白川総裁と親しい三輪氏も、「約束だけしても真水の貨幣を出さないのでは、緩和の効果はない」と見抜いていた。

                    以下、続く。次回は1月21日公開予定

 
◆ 内容紹介
ノーベル経済学賞に最も近い経済学の巨人、研究生活50年の集大成!!
この救国の書は、東京大学での教え子、日本銀行総裁・白川方明に贈る糾弾の 書でもある。20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するからだ。白川総裁は、アダム・スミス以来、200年間、経済 学の泰斗たちが営々と築き上げてきた、いわば「水は高いところから低いところに流れる」といった普遍の法則を無視。世界孤高の「日銀流理論」を振りかざ し、円高を招き、マネーの動きを阻害し、株安をつくり、失業、倒産を生み出しているのだ。本書で解説する理論は、著者一人だけが主張するものではない。日 本を別にすればほとんど世界中の経済学者が納得して信じ、アメリカ、そして世界中の中央銀行が実際に実行しているもの。世界から見れば常識となっている 「日本経済の復活」を、著者50年間の研究成果をもとに、わかりやすく徹底解説!
浜田宏一(イェール大学教授・経済学者)
1936年生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学経済学部卒業、イェール大学経済学博士取得。東京大学経済学部教授、イェール大学経済学部教授、内閣府経済社会総合研究所長、中央大学大学院総合政策研究科特任教授(2003年)などを歴任。